第6章 1つ先の景色
インターハイ
正式名称は全国高等学校総合体育大会。
宮城県予選、1日目。
「今はなんかね〜、ダサい異名ついてんだよ。
確かーー、"堕ちた強豪、飛べない烏"」
よく聞くなぁ、その異名。
「誰がつけたんだろうね。妙に厨二っぽい」
真っ黒尾先輩とか?
「カナは黙ってて」
蛍、アタリ強くない?緊張してるのかな?
「あ、」
伊達工だ。
やっぱ身長高い人多い。
「すいませーん。コイツ、エースとわかると"ロックオン"する癖があって…」
喋らないのかな?
旭さんを指差すだけで、無言でガンを飛ばしてくる青根高伸さん。
2年、192㎝弱。高いなぁ。ガタイも良い。パワーはもちろんだけど、意外と瞬発力も高くて厄介だ。
「だからーー、今回も、覚悟しといてくださいね」
同じく2年、二口堅治さん。
184㎝くらい。バランスの良い選手だ。この人も中々曲者。性格もだけど。
「きっ、緊張したっ…」
青根さんと視線を合わせていたから、ちょっと格好良かった旭さんは、伊達工がいなくなった瞬間、いつもの旭さんに戻った。
「なんでコートの外だとそんなに弱いんですか」
夕先輩、正直すぎ。
「よし、準備良いか?第1試合だ。そろそろアップとるぞ。
七瀬、頼んだぞ」
今回のインターハイでは、次の対戦校の試合の分析が私に任された仕事だ。アップから見たいので、ここでお別れ。
「はい。
いってらっしゃい。勝ってくるのを待ってますね」
「「「おう!!いってきます!」」
頑張れ、みんな。
さて、第2試合の対戦校は伊達工業vs桜下の勝者だ。
観に行きますか。
……観てるんだけど。
「んーー、ビデオで見た以上のことはないなぁ」
「予想通りだ、って?」
!?
「及川さん」
「やっほー、羽奏ちゃん。
烏野側のベンチにいないからどうしたんだろうと思ったけど、伊達工見てたんだね」
「…どうも」
試合終了。
伊達工業が勝ち進んだ。
「第1セット25-7、第2セット25-8。
セットカウント2-0で伊達工業の勝ち」
記録のためにビデオの最後に試合結果の音声を入れてビデオを止め、ノートも閉じる。
「2試合目、勝てそう?烏野とやるの楽しみなんだよね」
「青葉城西は問題ないでしょうけど、こっちは…どうでしょうね」
勝率なんて出せない。
「そっか。明日会えるの期待しとく」