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舞う羽は月に躍る《ハイキュー‼︎》

第5章 ネコとの邂逅


クロは『天使さま』のビデオをその場で見せてきた。

準々決勝と準決勝。
対戦国は三代女王の中国とアメリカ。
対して日本の女子バレーは、可もなく不可もなく、弱くはないが、しかし優勝候補からは程遠い立ち位置で、誰もが勝つなんて思ってなかった。
しかし結果は日本のストレート勝ち。
スパイカーもリベロもいつもより少し上手かなって程度で、その結果を生み出したのが、セッター『天使さま』だった。

解説によれば、身長148㎝、年齢はまさかの俺より一歳年下の中学1年生。
未成年だから、報道からも外れていたらしい。
代表入りが1年前で、スタメン入りは今回の試合が初。
…監督は鬼なんだろうか。
『天使さま』の緊張度合は、準々決勝のスタメン発表で入場するとき、盛大にコケていたことで分かりやすい。

周りより、ひと回り以上も小柄な身体。
遠目だけど童顔らしく、より小さく見える。
見た目は大人の試合に子どもが一人。年齢も離れているし、スタメン発表の時なんか、相手チームは失笑に近かった。

『天使さま』が出ていたのは、それぞれの試合の第1セットと第3セット。
派手な動きなんて1つもなかった。

でも、『天使さま』のチームは強かった。

コントロール抜群のジャンプサーブと、変化えぐ過ぎなジャンフロの二刀流使いも確かに凄かったけど、俺が驚いたのは、セッターとしての『天使さま』。
トスを上げる度に、選手のプレーが良くなっているように見える、のではなく良くなっている。
選手の状態なども含めた上で、完璧なトスを上げて、その選手のベスト以上を引き出す。
それはバケモノじみた技術の筈なのに、『セッターが凄い』と畏怖を生むのではなく、スパイカーに目が引き寄せられるような、見ているだけで打ってみたいと思うような、ワクワクするような、
バレーやりたいって俺ですら思うような。

『バレー界の天使』やら『天上の音楽』やら解説の人が言っているのを聞いて、いつもの俺なら
厨二病。クロは解説者に向いてるんじゃないか。
とか思うけれど、その時ばかりは納得してしまった。

確かに、『天使さま』はセッターとして天才なんだろう。でも、バレーがチームプレイだって、天才だけじゃ意味ないんだって、わかった。

ともあれ、『天使さま』のプレーを観て、俺のプレーの参考にした訳だ。視線フェイクとか。
俺にあんな才能はないけれど。
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