第5章 ネコとの邂逅
side 孤爪研磨
「オレ、天使さま見つけた!」
俺が中学2年、クロが中学3年のあの日、女子バレー世界選手権を見に行ったクロ(俺も誘われたけれど、台風は接近していたから断った)は、帰ってきたその足で俺の部屋に上がり込んできて(よくあるけど)、ドアを開けるなり、こう叫んだ。
幼馴染のクロは俺より一歳年上だけど、子供っぽいところがあって、中学2年生は1年前に過ぎたのに、まだ厨二病を患っていた。
結構前から、寒いなって思う発言はしていたけれど、中学1年生のあの時は、クロの発言に耐性が付いてきた俺でさえ、真剣にクロを心配せざるを得なかった。
そんな俺の気なんて知らずに、クロは最近よく見る胡散臭さが家出して地球の反対側まで行ってしまったようなキラッキラした純粋な目を、俺の両手を握りながら合わせてきた。
「何の宗教に勧誘されたの?」
これが、俺の返事だ。
ボケたのではなく、真剣にこの発言をするとは思ってもみなかった。
それが、俺が今までの人生で2番目にクロに驚かされた事件だ。
因みに1番目は、超人見知りだったクロと出会ったばかりの頃に、他のゲームでって意味でやりたいことを聞いたら、バレーボールを持ってこられた時。
それはどうでもいいんだけど、
あの日、外は大雨で真っ暗だったけれど、クロは『天使さま』と出会った。
…でもって、俺は初めてバレーが『綺麗』だと知った。