第5章 ネコとの邂逅
「……翔陽と七瀬さんが一緒のチームなのは怖いな」
一斉にお辞儀して去っていった音駒メンバーを見ていれば、ぼそりと研磨さんに話しかけられた。
「……研磨さんって、もっと人見知りなのかと思ってました」
研磨さんの頭を見て、帰宅したらプリンを作ろうと決めながら首を傾ければ、研磨さんはイタズラを思いついたような珍しい顔をした。
「クロがね、」
真っ黒尾先輩?
クロってネコの名前みたい。イヌでもいいけど。
「幼馴染なんだけど、」
私と蛍みたいなやつだな。
「君のファンで、」
!??
ファン!???
でもそっか、たった1日しか試合に出てない私を、雰囲気変わってるだろうに1発でわかってたもんね。ポーカーフェイス凄いな。全然わかんなかった。
「何回も試合のビデオ見せられたり、エピソード聞かされたりしてたから、初対面な気がしなくて」
恥ずかしい。
ビデオ、撮ってる人も居たんだなぁ。
「君のプレー、綺麗だった。色々参考にもさせてもらった。バレー、もうしないの?」
綺麗って言われるのは嬉しいなぁ。
確かに身長とかパワー値とか共通点あるかも。
「ありがとう。でも、もう出来ないから」
ふわっと笑顔を向けた。
「え…」
何故か、ガッチーンと固まった研磨さん。
どんな顔してたんだろう、私?
「挨拶!!」
タイミングのよい澤村先輩の掛け声で、研磨さんはフリーズから解けて、でもガッチンガッチン、挙動不審に走っていった。
「「「ありがとうございましたーっ!!!」」」
ありがとうございました。
きっと、また会えるけど、暫しお別れ。
「ーー今日のが公式戦だったら、1試合目、負けたその瞬間に終わるんだ。ぜんぶ」
うん、公式戦なら。
「知ってる」
だから、練習して、試合して、
「そーだ、わかってんじゃねーか。…そんでそのインターハイ予選はすぐ目の前だ。
さっさと戻るぞ。今日の練習試合の反省と、七瀬のデータ使った分析聞いて、そんで練習だ」
いくらデータがあっても、体が動かなきゃ全く意味がない。
「「「あス!!!」」」