第5章 ネコとの邂逅
そして2セット目、速攻1発目。
「日向くん、トスを見た」
すかさずタイムアウトを取ったコーチが影山くんに指示を出して
「インダイレクトデリバリー、ね」
普通の速攻をやろうとしてるのか。
もちろん、目を瞑ってフルスイングが"普通"だった日向くんは大慌て。
コーチは2回目のタイムアウトか。
「焦ってるな、コーチ」
お陰で日向くんの集中スイッチが入ったみたい。
この集中力は強みだよね。
確かに失敗もたくさんするけれどー、
「『"翼"が無いから、人は飛び方を探すのだ』か」
「烏養のじじいの言葉か?」
「えぇ、そんなことを言っていたなと」
変人速攻で度肝を抜いて、普通の速攻で翻弄して、まだまだ時間は必要だけれど、普通の速攻がまともに使えるようになれば、その時は、
「その時は、"鬼と金棒"じゃなくーー鬼と鬼だな」
んー、日向くんの"目"が気になる。
変人速攻の頂で日向くんが闘えるのなら、旭さんや龍先輩とやり方が違っても、三枚ブロックと勝負できるのなら、選択肢はもっと増える。
「今は雛カラスもいいとこだけど」
それにしても音駒。
前衛アタッカー3人囮にして、バックアタックでパイプ貫通。
直後にAクイック。
リベロの夜久さん。
黒尾さんの一人時間差。
20-16
強いなぁ。
「ふほほ…青いな烏養孫。焦りがダダ漏れじゃねーか」
化け猫先生はニヤニヤ。
「雛カラスが大人ネコの尻尾を突いて返り討ちされた」
チームレベルは圧倒的に音駒が上。
なら、
「パワーとスピードでガンガン攻めろ!!
へたくそな速攻もレシーブも、そこを力技でなんとかする。粗削りで不格好な、今のお前らの武器だ!!」
コーチも含めて未熟だけど、攻撃意思はピカイチだ。
「あ〜〜〜くそ、こっちの雰囲気に呑まれてくれたと思ったのにな…」
流石、化け猫先生。
「今 持ってるお前らの武器ありったけで、攻めて、攻めて、攻めまくれ!!!」
それでも、
「強いスパイクを打てる方が勝つんじゃあないんだ。ボールを落とした方が負けるんだ」
セットカウント2-0
勝者、音駒高校
「これが、"繋ぐ"ということだ」
試合終了。
「もう一回!!」
日向くん?
2試合目
25-22、26-24で音駒の勝ち。
「もう一回!!」
え、まだ?
3試合目
27-25、32-30で音駒の勝ち。