第5章 ネコとの邂逅
翌日、5月3日。
晴天。
「七瀬、悪いが日向を探して来てくれないか?」
日向くんがロードワーク中に迷子になりました。
「はい。潔子先輩、ちょっと行ってきます」
「うん、気をつけてね」
捜索、開始!
「どこだろ、日向くん。地元で迷わなくていいと思うなー」
「ったく、どこいったんだ研磨。スマホ持ってんだから連絡くらいしろよな」
独り言が被った??
「わぁ、斬新な髪型」
真っ赤なジャージを着た男子高校生。
蛍よりちょっと低いくらい。187㎝はある。
「失礼だなお前」
30㎝以上も上から見下ろされるのはやっぱり…いや、蛍で慣れてるからなんとも無い。
「それはすみません。気になったもので。
ところで、日向くん、小さくて賑やかでオレンジ頭の男子高校生見てませんか?」
「小さくてってお前に言われたくないと思うけど、日向くん。見てねえよ。
研磨ーー、俺と同じジャージのプリン頭のコミュ障見てないか?」
プリン頭のコミュ障…。
「あなたも充分研磨くんに失礼だと思いますけど。見てませんよ」
お互い目立つ人を探してるんだなぁ。
「……」
「………」
「一緒に探しますか」
てくてく。
てくてくてくてく。
「ところで、」
何でしょう、赤黒ツンツン頭さん。
「何か今、失礼なこと考えなかったか?
てかお前、"angel"だろ?」
…………
「何で、分かりました?」
angel
私の現役時代の異名。
「やっぱりか。
ウチの監督に勧められて、あの試合、見に行ったからな」
あの試合。
私の公式戦出場記録は中1夏の世界大会、準々決勝と準決勝だけだ。
たった1日だったし、未成年だったからテレビや雑誌では名前すら載せなくて、全体的な私の知名度は低い。
でも、会場にいたのなら。
「化け猫先生、来るって言ってましたもんね。
で、それを知って何を聞きたいんですか?」
何故辞めたか、とか?
「特に何も?」
「は?」
何このツンツン頭。
「聞きたいことはねぇよ。
ただ、"angel"に一度会ってみたかったのと、トス、上げて貰いたかったからな」
ふーん。
「会えましたね。
でも、トスは上げませんよ。私はもう"angel"じゃないし、プレーをする側に戻ることもないので」
「それは残念」
なんかこの人、妙に胡散臭い笑顔だな。