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舞う羽は月に躍る《ハイキュー‼︎》

第3章 出会いの化学変化



天才はムカつく。

けど、羽奏ちゃんは天才だけど天才じゃなかった。
学校の行き帰りでさえバレーボールを持っていて、暇があればボール回しや壁当てしてる。パワーやスタミナは女子の中でも中の下が良いとこ。それを補って余りあるコートビジョン、正確さは何度見ても惚れ惚れした。
サーブの打ち方だって、覚えは遅い方だった。理解は早いけど、身体が着いて行ってない感じ。
それでも、練習して練習して練習して、1週間後には完璧に自分のものにして仕上げてきた。

教えてた、なんて言ったけれど、俺が教わったことの方が何倍も多い。

何より、セッターとはどうあるべきか、という俺なりの答えを出せたのは羽奏ちゃんのお陰で、
俺のセッターとしての真ん中には羽奏ちゃんがいる。

前にも後ろにもいる正真正銘の天才たち。
それでも俺はバレーが好きで、セッターが好きで、今もそう在れるから、

やっぱり君は、俺の憧れなんだ。


あの日、俺は初めて体調不良以外の理由で部活を休んで、羽奏ちゃんの初試合を見に行った。
1日で強豪と2試合。
相変わらず羽奏ちゃんのバレーは綺麗で、というより、羽奏ちゃんのチームのバレーが綺麗で、羽奏ちゃん自体が凄く目立つってわけではないけれど、チームを回しているのは羽奏ちゃんだった。
バレーにおいてセッターは指揮者、とか聞いたことはあるけれど、あの時ほどその言葉を実感したことはない。

『天上の音楽』
『バレー界の天使』

厨二病感溢れるあの異名も、羽奏ちゃんとそのチームを的確に表していて、羽奏ちゃんは、たった2試合で観客を魅了した。
翌日の決勝戦で、羽奏ちゃんは一躍スターになると、あの試合会場にいた人は誰だって思ってた。

なのに。

なのに、翌日の決勝戦に羽奏ちゃんはいなかった。
正セッターを欠いた日本は、控えのセッターで決勝戦に臨んだが5-2で敗退。
羽奏ちゃんのその後の足取りは分からなくて、市民体育館からも、北川第一中からも姿を消した。

たった数ヶ月だけの関わりで、もう会うことはないんだろうな、と漠然と思ってた。

だから、

飛雄ちゃんの行った烏野高校との練習試合に病院に行っていたせいで遅れて向かってみれば、水道で烏野のジャージを着てドリンク作ってる君に会うなんて、思ってもなかったんだよ。

ねぇ、羽奏ちゃん?

「久しぶり〜。連絡くれないから及川さん、寂しかったよ〜」
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