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舞う羽は月に躍る《ハイキュー‼︎》

第3章 出会いの化学変化


side 及川


俺が、羽奏ちゃんと初めて会ったのは3年前の春だ。

北川第一3年生。
最終学年の今年こそ牛若ちゃんに勝ってやると意気込んでいた。練習は出来るだけしたいけれど、部活が休みなどで体育館が使えない日に、市民体育館を借りていた。

そこでよく練習していたのが羽奏ちゃん。
利用時間を書くボードによく現れる"天使"の字。珍しい苗字だし、よく借りているから目に付く。
利用時間は大体5時間以上。うちの制服を着ているけど見覚えないから1、2年生。学校が終わってから直接向かい、閉館ギリギリまでひたすらバレーボール。
お互いコート一面貸し切っているから、同じ体育館に被ることはほとんどなかったけれど、行き帰りで一緒になってるからお互い顔見知り。

5月になって、初めてコートが一緒になった。

天井から吊り下げられた網越しの向こう側。
丹念な柔軟、アップ、オーバーハンドトス、アンダーハンドトス。

そこまでを練習しながら横目で見て、彼女がかなり上手いことが分かった。
全く乱れないトスは何というか、綺麗だった。
俺が驚いたのはそこからだ。

徐にカバンからペットボトルを何本も取り出して、エンドライン沿いにずらりと並べる。ペットボトル同士の間隔は、凡そボール1.5個分。
ペットボトルを並べたコートの反対側のエンドラインから数歩後ろに下がって、ジャンプサーブ。
一本ずつ全部倒して、倒し終わったらもう一度並べて、今度はジャンフロで倒す。サイドライン沿いにも並べて倒して、その次はネットスレスレ。そして、コートの中バラバラに置いて倒す。
威力があるわけではない。ジャンプサーブでも、何なら女子の平均より弱い。
まぁ、女子でジャンプサーブやらジャンフロやらする人なんていないけど。
驚くべきは、針の穴を通すようなコントロールと、ジャンフロのエグい変化。
モーションはジャンプサーブでもジャンフロでも全く同じ。教科書みたいに綺麗なフォーム。


正直に言おう。
見惚れた。
行き帰りでは下ろされていた肩より少し長い、綺麗な黒髪は高めの位置でポニーテールにされて、バレーボーラーとしても、同年代の女子と比べたって小さな身体から生み出される綺麗なトス、サーブ。
俺はセッターで、セッターというポジションに誇りを持っているけれど、それでも、スパイカーとして彼女の上げたボールを打ってみたいと思った。
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