第2章 私の従兄
高校生になったら、背が伸びるなんて嘘だったんだ。大きくなるのは胸ばっかり。姿見の前に立って、ため息を吐く。ブラウス越しでもわかるボリュームのある胸元と、148cmの背丈はアンバランスでやっぱり好きになれない制服姿。早く制服から解放されたい。
制服があるおかげで、私服とかは迷わなくてすむけど、制服はみんな同じのを着ているせいで、どんな体系なのか丸わかりなのだ。私服だったら、カモフラージュできる部分をさらけ出すように作られている。ネクタイを締めようとアワアワしていると、ドアの隙間から猛禽類のような瞳が一瞬だけど見えた。私の従兄こと、木兎光太郎がドアの隙間から覗いていた。
「 手伝おうか? 」
「 ……ノックしてよーー!! 」
朝一番の大声をだして、ネクタイを投げつけるとひらりとキャッチされた。
「 なんだなんだ、晴れ姿を見に来たのにー。」
ブーブーと膨れながら、部屋に入ってきてブラウスの襟の後ろにネクタイを引っ掛ける。布の擦れる音がして、ギュッと少しだけ胸元が苦しくなった。胸元に視線が集中してる光太郎ちゃんの手を軽くチョップ。
「 なに見てるの? 」
「 いや、我ながら上手く出来たなぁっと!! さぁ、行くぞ。」
手を引かれ、家を出ると温かい春の空気が胸いっぱいに流れ込む。おばあちゃんは既に外でカメラを持って待ってる。
「 さぁ、笑って笑って。あら、光太郎くんも撮るの? 」
「 ちょちょ、光太郎ちゃん。私の写真なんているの? 」
「 んー、まぁ記念だよ!! 」
パシャりと渇いた音がした。今度は連写の音。何枚撮ってるんだろうと意識すると、顔がどんどん赤くなっていく感覚がする。
「 あははっ、顔が赤いぞ。」
「 もぉー、行ってきます!! 」
ニヤニヤと揶揄うように笑う光太郎ちゃんの腕を、今度は私が引っ張った。大きな手が、くしゃりと私の頭を撫でる。
「 一緒に頑張ろうな!! 」
ホットミルクのような甘さを兼ね備えた視線に、ほんのりと甘えながら新しい学校を目指す。行き先は、梟谷学園だ。ぎゅっと固く握られた手を、優しく握り返した。