第1章 プロローグ
一種の選択だなぁ
遠くからバレーボールが床に叩きつけられる音と同時に、猫又先生がポツリと呟いた。
そうですねぇと呑気に返せば、何処か嘆くように私を見つめる。
「 すまなかった、もっとしっかりしておけば。」
「 いいんですよ、猫又先生の言う通り一種の選択だったんです。」
部室の荷物を全てリュックに詰め、部室を出る。猫又先生は、校門まで付いてきてくださった。私はいいのにと謙遜するけど、いやいやと頑固に断られる。温かい空気を吸って、息を強く吐く。もう、音駒高校に足を踏み入れることは二度とないだろう。
「 ……何を言えばいいのか、わかりませんので。……サヨウナラ。」
「 さようなら、だな。本当に、すまなかった。」
握手もなにもせずに、頭を軽く下げて校門を一歩踏み出す。拒絶でもあるお別れに、ほんの少しだけ涙が出そうになった。