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【テニプリ】Merry-Go-Round【短編集】

第1章 【仁王】ジョーカーのせいにして


「へぇ、アイツのこと考えると何か自分がおかしくなりそうってか。つーかお前らようやくちゅーしたんだ」
「まぁそんなとこ。……え、ようやくってなに」
「いや、アイツずっと前から『酒々井と手繋ぐにはどうしたらええんじゃ』だの『理由なくハグしたらどう思うんじゃろか』だのうじうじ悩んで相談してきてたんだぜい? 良かったじゃねーか。明日赤飯買ってってやろ」

……待て待て待て待て。あの仁王が? 丸井に? そんな乙女のように相談をしていたって? それこそ本当に頭がパンクしそうだ。ぐしゃぐしゃと髪を掻き回すと、「お前女子だろい。もっと身だしなみに気ィ遣えよ」なんて笑われてしまった。

こんな時仁王なら、にへらと「お揃い」って手を伸ばしかけて――――ただ隣にいて笑うよね。それから何でもない話して、それがすごく楽しくて、気付けば休み時間が終わったり部活の時間になったり……。何だかんだで充実して、いつも一緒にいて……。

そうだ、いつも隣にいるんだ。いつから彼が隣にいることを疑わなくなったんだろうか。"当たり前"が普通になったのはいつからだろうか。何か仁王の存在に甘えきっているような気がした。

「ってか、なんで丸井こんなところにいんの? 部活は?」
「病院。手首若干痛めちまってよぉ。関東大会に向けてますます練習ハードになる前に行っとこって思って」
「へぇ、大丈夫なの?」
「おう、ヨユー。お前さ、仁王の気持ちちゃんと汲んでやれよな」
「え?」
「アイツお前のこと大好きで大好きでしゃーねぇのお前だってわかってるだろい? そーゆー雰囲気の2人じゃねぇのはわかってっけどさ、たまにはアイツに恋人気分味わわせてやれよ? じゃねぇとアイツすぐ凹むし」
「そうそう、アイツすぐ凹むの」
「めんどくせぇ」
「でもなんか放っておけないっていうかさ」
「そうなんだよなぁ。だから優しくしてやれよ」
「……うん」
「アイツ、好きか?」
「……うん、たぶん。いやうそ、わかんない」
「なんだそれ」

明日、手を繋ごうって言ったら仁王はどんな反応をするんだろうか。きっと驚くんだろうな。でも、もしかしたら黙って手をとるのかもしれない。嫌だったりするのかな……ああ、きっとアイツもこんな思いを抱えているんだ。

明日は優しくしてやろう。そんな気持ちになったのはきっと……丸井(ジョーカー)のせいだ。


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