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【テニプリ】Merry-Go-Round【短編集】

第1章 【仁王】ジョーカーのせいにして


「「……………………」」

一瞬にして私たちの間を駆け抜ける静寂。しばらくの沈黙のあと、ズシリと重そうなラケットバッグを抱えて、「部活行く」と白い尻尾は教室をあとにした。その背中を見届けてから、私も帰ろうかと荷物をまとめようとしたらひょこっと顔を覗かせて「毎度毎度送ってやれんですまんのう」と、そう思ってるのか思っていないのかよくわからないまま、また消えていった。

「ホンット意味わかんない……」

鞄をむんずと掴んで私も教室をあとにした。少し早足で外に出るとむさ苦しい掛け声が飛び交っていた。テニス部は見えづらい。……って、なんで私テニスコート探してんの。首を左右にぷるぷると振って、校庭に背を向けて私は駅へと歩き出した。

付き合ってからと言うもの、無意識のうちに仁王を目で追ってしまうことがよくある。その度に何となく「いかんいかん」と自分を律してきた。仁王に入れ込みすぎると自分が自分らしくいられなくなってしまう気がして。そんな恐怖感から何となく彼と距離を取っていたというのに……。

あのキスには何の意味があったというのだろうか。いや、仁王のことだからなにも考えていないのかもしれない。それでも気になってしまう。ファーストキスだったから? 想像もしてなかったから? 予測できてなかったから? それとも……相手が仁王だったから?

「やめやめ。アイツのことでこれ以上頭の中いっぱいになるのは何か癪だし……なんか、腹立つし!!」
「何が?」
「わっ、ビックリした丸井か……驚かせないでよ……」

にゅっと背後から姿を表したのは丸井だった。ぷくーっとフーセンガムを膨らませ「わりわり、で、どうしたんだよ」って隣に並んだ。


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