【テニプリ】Merry-Go-Round【短編集】
第2章 【千石】すべてせせらと笑ってやれ
「……ごめんて。謝る」
「やだ、許さない」
「顔見せてよ。今何考えてるのか知りたい」
しゃがんで下から私の顔を覗き込もうとするから顔を背けると体が重力を失う。
「わっ、」
キヨに抱き上げられ、俯いてた顔を上げる。いい歳してこんな風に空を仰ぐことなんてないから、恥ずかしいけど新鮮な感じ。
「……どうしよ、俺のために泣いてくれてるのが嬉しいとか思っちゃう」
「どーかしてるよ」
キヨも私も。だってその言葉を聞いてキヨのためならば涙を落とすのも悪くないかもって思えてくるんだもん。でも笑顔の方が見たいかなぁ、そう顔色を窺ってくるキヨの頬にそっと唇を落とす。
「キヨが笑わせてくれるんでしょ?」
「お望みとあらば」
今度は頬じゃなくてキヨのそれに口付ける。何度重ねても足りなくて、どんどん深く求め合う。
「ねぇ、キスだけじゃ足りないんだけど」
「うん、私も……。ホテル戻ろっか」
キヨとよりを戻すなんて選択は私の描いてたシナリオにはなかったかもしれない。だけどそんなもんなんかどうでもいい。中学生の頃にはできていた賢い恋愛の仕方なんて今はできないけどそれでもいいや。
余計な考えは全部笑い飛ばしてしまおう。それがきっと進むべきを導いてくれる筈だから。