【テニプリ】Merry-Go-Round【短編集】
第2章 【千石】すべてせせらと笑ってやれ
「ここ、契約継続したの? 確認してみますって言ってからかなり時間経ってない?」
「ああ、その会社でしたら――」
こんなに緊張して会議に参加するのは入社して1年間以来のことで落ち着かない。もう、心臓ドキドキうるさい。出来る限り発言したくなくて、注目を浴びたくなくてじっと息を殺して空気に溶け込む……
「酒々井」
「は、い」
ことは不可能だった。脳みそは空っぽのまま資料の重要そうなところを朗読する。頭が回ってないながらもちゃんとわかってた、わざわざ書いてあることをそのまま読み上げるのは何の意味もなさないことを。曇りゆく上司の顔を見て本格的にまずいと心の底から思う。何か……何か説明をしなくては……。
「係長、アンケート結果以下は私の担当でしたためここからは私が説明致します」
カッと熱が増していく。情けない。情けなさすぎる。打ち合わせも右から左に流して、会議では後輩にあからさまにフォローされて。上の空の原因は全部、全部……
『あのねぇユカ、だぁいすき』
『ちぃっちゃいころからねぇ、おれユカしかみえてないの』
『ずっとずっとだいすきなの』
『ユカはおれのおよめさんなの』