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【テニプリ】Merry-Go-Round【短編集】

第2章 【千石】すべてせせらと笑ってやれ


「じゃ、私仕事行くから。そっちもそろそろ支度しないと遅刻するよ。鍵はここおいとくから、かけたらポスト入れといて」
「ポストぉ? さーすがに不用心なんじゃなぁいのぉ?」

たぶんまともに顔を合わせようとしないから小さな嫌がらせをしてんだろうな。間延びした声でご丁寧に玄関までお見送りしてくる。にやにやスマイルつき。何時に帰ってくるの、迎えに行ってあげようか、夕飯作って待ってるわ、あれこれ言ってるけどここ私の家だっての。

「ため息ついてるけどさ、本当に迎えに行ったらどうする?」
「どうするってあんただって仕事でしょ、できっこないこと言わないでよ」

私の返答を聞いて満足げに「まぁね~」と鼻を掻いた。あれはからかって私の反応を楽しんでるサインだ。昨日の多少可愛げのある姿は見間違い……ってことにしとこ。

「とにかくとして、これ以上あんたに構ってらんないの。わかったら着替えなよ?」

キヨは私が家を出るまでヘラヘラとした笑顔を絶やすことはなかった。――その顔が高校時代、付き合ってた頃最後にキヨの家を訪れた時の別れ際と重なって見えた。



「……ユカ、ドアに背を向けてでも俺の方向きながら家出てく癖まだ直ってないんだ」

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