【テニプリ】Merry-Go-Round【短編集】
第2章 【千石】すべてせせらと笑ってやれ
「あのねぇユカ、だぁいすき」
明日の仕事に必要な書類データの確認をしていると、急に静かになったのでもう寝たものかと思っていたキヨが突然そんなことを言い出した。ああ、酔うとこどもっぽくなるのかな。
「はいはい」
酔っぱらいの戯れ言を真に受けてはならぬと聞き流すことにした。私が呆れてため息をつく様を見てか、キヨはあからさまに拗ねた。
「ちぃっちゃいころからねぇ、おれユカしかみえてないの」
「はいはい」
「ずっとずっとだいすきなの」
「……うん」
「ユカはおれのおよめさんなの」
「そう」
どうせお酒の力であることないこと言ってるに違いない。そう思いたいのに彼の言葉を受けて素直に心は嬉しいと叫んでいる。明日になればあれは嘘だから忘れてくれと言われるのがオチだ。期待するなゆかり。キヨの言葉に惑わされている場合の歳ではないはずだ。
「……ねぇ、キヨ」
今もまだ本当に私の事が好きとか言わないよね? そう聞こうとパソコンからベッドへと視線を移したが満足そうな顔をしてグースカ眠っていた。……相変わらず掴み所のない男。幼児に構うことなく私はキーボードを叩くのであった。