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【テニプリ】Merry-Go-Round【短編集】

第2章 【千石】すべてせせらと笑ってやれ


「酒々井さん、明後日のミーティングで使う資料もうあがった?」
「すみません!! もう少し~!!」

中学を卒業して早10年、私は立派に社畜人生を送っていた。代わり映えのない飽き飽きする毎日を繰り返しては、ただ、その面白くもない毎日をそれなりに楽しんでいる。たまにお酒を飲みながら、あの頃は若かったなぁとか感傷に浸ることはあれど常に明日のことを考えて、明日を見て生きている。

これお願いします、その声と共に机に置かれた書類と貼り付けられたロールケーキ色の付箋メモには『今晩食事でもどうですか』の文字。パソコンに齧り付けだった視線をそっちに向けるとイタズラにウインク飛ばしてくる可愛い後輩がいた。……奢れってことかぁ。まぁいいかと指でOKサインを作った。



「あれ、ゆかり?」
「うげっ、キヨ……」

数年ぶりの再会が何のロマンの欠片もないような居酒屋だなんていうのは実に面白くない。お互い同伴付き。うちの後輩くんも、彼女だろうか、そっちの女性も揃いも揃って、誰? と聞いてくる。目を合わせて、どう答えるのか聞いてみるとキヨが、特別な人と笑った。

「……幼馴染みだよ」
「何で言うんだよ、それでも特別にかわりないけどさぁ。彼氏?」
「いや、後輩。そっちこそ彼女?」
「んー、残念ながら後輩」

そっか、じゃあねと背を向けようとすると、腰をガッツリと捕まれて、じゃあ行こっか! と笑って店内に押し込められた。


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