第10章 君に愛を
愛side
あの一件から数日。
私と兄さんは縁切りだけは止めてくれという分家が後をたたず引っ切りなしに手紙やら物が届くので、それの中身を調べたりと忙しかった。
『……御影家からも届いてる……』
「はあ?!あそこは完全アウトだって伝えたはず!」
『手紙には濡れ衣だと書いてあるけど、どうする?』
「全部、突き返せ!」
『ん、睦月さーん!これもお願いします!』
「かしこまりました。」
手紙の内容はどこの家も似たような感じだ。
御影家みたく濡れ衣だとか脅されてただの……酷いのは騙されてたって内容だった。
何を条件に出されたのか知らないけど、加担してたの認めてるじゃん。と2人で手紙にツッコミを入れたのは記憶に新しい。
『(あれから何の音沙汰も無いし、このまま婚約の話は無かった事にした方が良いのかしら。)』
分家からの貢ぎ物を手紙と一緒に分けながら思案する。
彼から何のアクションも無いのを考えると私達の存在は邪魔なんじゃないかと思う。
連絡先を交換していないから来ないのは当たり前。
『(だけど、駄目なら言って欲しいな。)』
仕分けしていた手を止めてボーッとする。
やはり、兄さんに言って婚約の話を白紙にしようと決めたところで睦月さんに呼ばれた。
「愛様」
『どうしました?』
「今、お時間よろしいでしょうか?」
『今?えぇ、仕分けの方もだいぶ片付いているので……』
「お客様がお見えになられております。」
『……睦月さん、それを先に言ってください!』
慌てて身だしなみを整えて客間へ急ぐ。
『(兄さんじゃなくて私にお客様?)』
あの一件が片付いたからといって、分家が本家に取り入ろうとするのは少なくない。
また分家の誰かが見合い話でも持ってきたのかと若干げんなりしてしまう。
『……お見合いなんかしたくないし、どう断ろうかな。』
目的の客間に辿り着いて、息を整えてから声を出した。
『失礼致します。』
扉の先にいたのはー
「遅くなってすまない。」
安室透ではなく、降谷零の方だった。
『へ?』
「何、変な顔してるんだ?」
『え?だって……れ、透がお客様だなんて聞いてなくて……』
「零で良いよ。睦月さんから聞いてなかったのか。」
『大丈夫なの?』
「愛と幸紀を信じてるからさ。」
それはとても嬉しい言葉だった。