• テキストサイズ

Dearest【降谷零夢】

第10章 君に愛を


降谷side

“心だけじゃなく、何もかも貴方にあげる。”

そう言って泣きながら笑ってくれた愛に俺は唇を寄せた。
この愛しい人の全てを貰えるのが嬉しくて仕方がない。

「……愛してる。」
『……私も、零を……ううん、零だけじゃなく安室透もバーボンも……貴方の全てを愛してます。』
「っ!バーボンまでも愛すのか君は。」
『当たり前でしょう?』
「当たり前……か。」

さらっと俺の喜ぶ事を言ってくれる。
彼女の身体を抱き締めて幸せを噛み締めた。

「あー…………もう良いか?」
『「え?」』

突如聞こえてきた声に、バッと振り向くと扉に寄りかかった幸紀が居心地悪そうにしていた。

『に、兄さん!?』
「おまっ……いつの間に……!」
「一応、ノックはしたんだけどな。」
『声も掛けてよ!』
「いやぁ、邪魔するのも悪いかなって思ってね。」
「ちなみにいつから居たんだ?」
「他の男に盗られる云々のところ。」
「結構前からいたのかよ!」
「独り身の俺には辛い光景だったわー。」

ニヤニヤしながら言う幸紀に若干の殺意が芽生える。

「なら、お前も恋人くらい作れば?」
「そうだなぁ……跡取りとかを考えると早めに見つけないといけないか。」
『わ、私お茶持ってくる!』
「あっ……」

俺の腕の中から逃げるように部屋を出ていく愛。
さっきまであった温もりが消えていくのを何となく寂しく感じていると、幸紀が向かいに座った。

「恥ずかしくて逃げたな。」
「ははっ、仕方ないさ。」
「んで?」
「ん?」
「答え、出たんだろ?」

彼の言わんとしている事を理解した俺は、居住いを正して改めて幸紀に向き直った。

「……葉月家御当主、妹様である愛さんとのご婚約喜んでお受け致します。」
「ぶっ……!何、そんな畏まってんだよ。普通で良いって。」
「だけど、幸紀は当主であり兄なんだから彼女の両親がいない今、言う相手はお前以外いないだろ?」
「俺は毛利さんへの依頼料を払っただけ。」
「……幸紀……」
「だから畏まらなくて良い。お前は愛の恋人であり俺の友人だ。」

愛といい幸紀といい……俺の欲しい言葉をくれる。

「(友人と呼べる存在なんて、もういないと思ってたのにな……。)」

此処は俺が“俺”でいられる唯一の場所。



/ 56ページ  
エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:なごんだエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白い
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp