• テキストサイズ

Dearest【降谷零夢】

第9章 決着


葉月家から出て、僕らは車へと戻った。
行きと同じ様に後部座席に蘭さんとコナン君が座り、助手席には僕。
蘭さんが持ってる包みを開ければ、中には見覚えのあるモノが入っていた。

「わ、これって……」
「ハムサンドだね!」
「俺にも1つくれ。」
「はい、お父さん。安室さんも。」
「ありがとうございます。」

毛利先生と僕に1つずつ渡し、2人も手にとってそれを食べた。

「美味しい!」
「お、美味い!」
「……でも、これ……安室さんのハムサンドと同じ?」
「そう言われれば……」

それはそうだろう。
僕の作るハムサンドは彼女直伝だ。

「彼女が昔、作ってくれたのを思い出しつつ作ってたんですよ。」
「へぇー!じゃあ安室さんの思い出のハムサンド?」
「そう、ですね……」

帰り際に見た彼女の笑顔を思い出す。
昔の無表情からは考えられない位だ。
ハムサンドをひと口食べれば自分が作ったのと同じ味、だけど懐かしい。
これをアイツ等に食わせた時、すごい美味いと言ってくれた。
俺が考えたわけじゃないのに何だか自分の事の様に嬉しかったのを覚えてる。

「(もし、アイツ等が生きてたらこんな俺を叱咤してくれるんだろうな……)」
「安室さん?」
「!はい?」
「あの……何かすみません……聞いちゃいけなかったみたいですね。」
「いえ、そんな事ないですよ。」
「でも……」
「本当に、大丈夫です。」

俺は今、安室透になれてるだろうか?
上手く笑えているのかすら分からない。
ただ分かるのは愛の笑顔を思い出す度に胸が苦しくなる事だけ。
もし、公安になっていなければ……潜入捜査なんかしていなければ……今すぐ抱き締められるのに。
好きだと大事だと思えば思うほど今の立ち位置が憎らしくて仕方がない。

「(それでも進まなきゃいけない。前を見ていなきゃ奴等を壊滅させる事さえ出来ない。)」

彼女とまた会えたからこそ、その先の未来を見る為にもー。

「……そうか……」
「ん?安室どうした?」
「あ、いえ……」

なんだ、答えは出てるじゃないか。

「(守れるかどうかじゃない。俺が愛を守るんだ。)」

横目で見てくる毛利先生に笑って何でもないと返して、もう一度彼女の元へ行く決心をした。
もう迷わない。
俺を信じてくれている愛や幸紀、睦月さんを俺も信じてるんだから。



/ 56ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp