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Dearest【降谷零夢】

第9章 決着


本物と見分けが付かない指輪を分家が見極める術はない。
そこを突いて愛はまるで自分のがレプリカであると言葉巧みに思わせた。
グッと押し黙る分家、静まり返る中それまで言葉を一切発する事のなかった真理子がポツリと言った。
それは静かな中とても響いて聞こえた。

「……もう、終わりにしましょう。」
「……真理子さん?」
「いつまでも派閥争いなどしてては葉月家の存続自体が危うくなります。」

スッと前へ出て、幸紀と愛に対して膝を付く。
何かされるのでは?と危惧した安室が愛を背中に隠した。

「……毛利探偵のお弟子さん、大丈夫ですよ。私はこの子に何も危害など加えたりしません。全てお話します。」
「何を言うつもりだ?真理子」
「……事の発端は祐一郎……兄とこの宗次郎、双子が産まれたのが原因です。」
『……父さんが双子?』
「えぇ。お父様、つまり貴女のお祖父様が後継者を選んだのが祐一郎お兄様であった事が宗次郎お兄様は気に食わなかったのです。」
「……それだけの事で……?」

小五郎の言葉に先程、真理子に声を掛けた男ー宗次郎は勢い良く言い返した。

「それだけじゃない!アイツは……祐一郎は俺が彼女を好きだと知って奪った……!!」
「彼女?」
「桐華さん……」
「そうだ……桐華と出会ったのは俺が先だった。」

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あれはまだ、愛の父祐一郎と宗次郎が大学生だった頃。
片割れである祐一郎を待っていた。

「……遅いな……教授に掴まってんのか?」

腕時計を見ながら壁に寄りかかっていると、足元に転がってくるモノに気づいた。

「……ペン?」
「すみません!それ私のなんです!」
「え?あぁ……っ」

整った顔立ちに黒くて長い艶のある髪、スラリと伸びた手足に括れた腰……とてもスタイルの良い女性に目を奪われる。
宗次郎が差し出したペンを受け取り、柔らかな笑みでお礼を言う女性が愛の母である桐華だった。

「有り難うございます。」
「あ、いえ……。それ、レポート?」
「はい。中々進まなくて、そこのベンチで書いてたんですが……手が滑ってしまって……」
「それにしても、俺の所まで転がってきたけど?」
「それが……拾おうとしたら足で蹴飛ばしてしまったんです。」

それが始まりだった。

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