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Dearest【降谷零夢】

第6章 幕間


確かに、この人が当主として発言するなら分家は一切口出し出来ない。
でも……本当に信じて良いのだろうか。

「失礼致します。」
「睦月さんおそーい、話終わっちゃいましたよ。」
「それはそれは。」
『えっ、まだ話終わって……』
「愛ちゃん、俺はね彼とも約束したんだよ。」
『零と?』
「俺が何とかするって。だから……これからは兄として君と接したい。」

この人を信じるのは怖い。
膝の上に置いた手を睦月さんが握ってきた。

「愛様、零様はとても貴女様を案じておられました。」
「帰るのを渋るくらいにね。」
『……そう、なんですか……』
「無理に信じてくれとは言わないよ。俺のしてきた事が君に深い傷を与えたんだから。」
『……元々、分家の人達には憎まれてましたから……そんなの今更です。』
「それでも、もっと早く真実を知っていればここまで酷くはならなかったんだ。」

苦しそうな顔でその人ー幸紀さんは手を震わせて私の頭をぎこちなく撫でた。

「愛ちゃん、本当にごめん。」
『っ。』

あまりにも優しい手付きで、気付けば私はしがみついて泣いていた。
私の背中に腕を回し抱き締めてくれた。
その温かさは死んだ両親を思い出させる。

「……俺は君の兄だと名乗っても良いかな。」
『……胸を張って名乗れないなら駄目です。』
「え、」
『……名前も呼び捨てじゃないと兄だなんて思えません。』
「ふふ、幸紀様良かったですね。」
「!あ、あぁ……。こんな俺を許してくれて有り難う、愛。」

……家族に名前を呼ばれるのがこんなに嬉しいんだと気付けた気がする。
あの日、零が私の前に現れなかったら兄となったこの人と解り合うなんて出来なかった。
また家族が出来るなんて思わなかっただろうな。

『(零、有り難う……貴方に出逢えて本当に良かった。)』

届かないと判ってても心の中で彼を想った。
その日から私と兄さんは今までを埋める様にお互いの事を話し合い、これからの話もした。

「あ、そうだ……愛、今大丈夫かい?」
『ん?』
「これから大学通おうか。」
『えー……今更、通った所で……』
「駄目だ。一応、俺の補佐みたいな位置になるんだから。」
『……なら、補佐の位置を無しに……』
「……そういう事言うなら零が出てるコナンの話見せないからな。」
『ずるい!』


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