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Dearest【降谷零夢】

第6章 幕間


零と離れて数日後、私は父の実家である葉月家の前に立っていた。

『……父さんが死んだ日以来かな……』
「お待ちしておりました。お久しぶりでございます。」
『……えっと……』
「睦月でございます。愛様お綺麗になられましたね。」
『睦月さん、お世辞は良いですよ。』
「いえいえ、決してお世辞などでは御座いませんよ。奥様に良く似てらっしゃる。」
『……ありがとうございます。』
「……では、幸紀様の元へご案内致します。」

門を潜り、敷地へ足を踏み入れる。
いつもなら分家の手が回った人達がいる筈なのに今日は1人も見かけない。
此処へ来るとだいたい冷たい視線と罵声を浴びるから変な感じだ。

『(言ってた通りに抑えてくれたのかな……。)』

そんな事しても、あの人にメリットは無いのに。
睦月さんがある部屋で止まった。

「愛様、此方で幸紀様がお待ちです。」
『……は、い』
「幸紀様、睦月でございます。愛様をお連れ致しました。」
「ありがとう、下がって良いよ。」
「はい。」
「あ、睦月さん、お茶とお茶菓子お願いします。」
「かしこまりました。」

睦月さんが去っていく。
開かれた襖の奥にあの人が座っていた。

「早いとこ入って座ってくれると助かるんだけど?」
『……失礼します。』
「うーん、一応此処は君の家でもあるんだよ?そんな畏まらなくても……」
『私は此処を家だと思った事はありません。葉月家の者達からしたら忌むべき存在。』
「それは分家が勝手に言ってる事。君は本家の血筋を引いた正真正銘、此処の跡取りだ。」
『ご当主が仰る言葉ではないと思いますが……』
「えー。」

……なんなんだ、このフランクさ。
この人こんなキャラだった?
今までは憎しみの篭った瞳で私を見てきたのに、今じゃまるで……

『(家族を見てるみたいな……)』
「さて、来てもらって早々言いたい事がある。」
『……はい。(どんな罵声浴びせられようと受けてやる。)』
「今までごめんね?」
『…………は?』
「事情を知らなかったとはいえ、分家の奴等に傷付けられた君に追い討ちかけた。」
『……は?何を言って……』
「本当だったら俺が君を守ってあげなきゃいけなかったんだ、義兄として。」

何を言ってるの?
義兄ってどういう事?

「それが君の両親との約束だったのに。」

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