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Dearest【降谷零夢】

第5章 離れても


ー……ろ!

何か聞こえる……。

ー起きろ!ゼロ!!

その声にバッと起き上がれば、目の前で呆れた表情のヒロがいた。

「……ヒロ……お前、何でここに……?」
「連絡したのに返事が無いから来てみたら玄関の鍵は開けっ放し、その上浴室で倒れてるときた。」
「わ、悪い。」
「だいたい服着たまんまで何してたんだよ。」
「……夢……?」
「はあ?」
「いや……何でもない。」

まだブツブツと文句を言うヒロを宥めて、俺は浴室を振り返った。

「(まだ、彼女の温もりが残ってる……)」
「なぁー、ゼロ腹減らね?」
「ん?あぁ、そうだな。」
「何か食いに行くかー。勿論、お前の奢りな。」
「はあ?!」
「こんだけ心配かけたんだ、当たり前だろ?」
「……分かったよ。」

ちなみに、あれから何度も浴室へ足を運んだがあの現象は起きる事はなくもう2度と彼女に逢えないのだと思い知らされた。


ーーーーーーー
ーーーー
ーー

零が居なくなった。
覚悟はしてたけど、やっぱりキツイ。

《愛、泣かされたの?》
《あの人間悪いヤツ?》
『違うよ…………っ』

窓を開けっ放しにしてたら鳥達が入ってきて、私の周りに止まる。
まるで慰めてくれてるみたいに。

《僕らがいるよ。》
《愛は1人じゃないよ。》
『……うんっ!』
《……アイツ来てる。》
《こっち見てる。》
《追っ払う?》

“アイツ”
それは、あの人を示す言葉。
チラリと外を見れば心配そうな表情で此方を見てた。

『(何で……そんな顔するの?私が憎いんじゃなかったの?)そういえば……』
《愛?》
《やっぱり追い払おう。》
『……待って。』

鳥達を止めて零が言ってた言葉を思い出す。
いい加減、向き合わなければいけない。

『……逃げてばかりじゃ駄目だよね……零。』

立ち上がった私を不思議そうに見つめる鳥達に笑いかけて、外にいるあの人へ声を掛けた。

『……そこにいると不審者扱いされますよ。』
「!まさか、声掛けてくれるとは思ってもみなかったよ。」
『……今度、其方に伺います。その時、話をしましょう。』
「分かった。分家の人らは抑えるから安心して。」
『……お願いします。』
「じゃあ、また……」
『……はい。』

零、見てて。
私も前を向いて歩き出すから。
もし、また逢えたならその時は変わった私を見てね。
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