第4章 接触
あのストーカー事件から少し経ったある日の事。
普段は愛としか外出しなかった降谷は珍しく1人で外出していた。
ある場所を目指して。
その理由は数時間前の事だった
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「なんだ?手紙?」
ポストではなくドアに付いている郵便受けへ直接投函された手紙。
その宛名には家主である愛の名前ではなく、降谷零と書かれていた。
「……俺宛って……」
自分の知り合いなんぞ1人もいない世界で自分宛に出された手紙。
考えなくとも唯1人、それを出来る人物がいる。
「……わざわざ愛がいない日を狙ってたのか。」
手紙には時間と場所が書いてあり、話がしたい1人で来て欲しいと綴られていた。
罠の可能性もあったが話がしたいのは降谷自身もなので、すぐに着替えいつもの帽子とサングラスを身に付けて外へ出た。
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「……ここ…で合ってるよな?」
着いた場所は屋敷。
正に豪邸といったところか。
「降谷様ですね。ご当主様よりお話はお伺いしております。どうぞ、此方へ」
「ありがとうございます。」
燕尾服を着た初老の男性が出迎え屋敷内を案内してくれる。
「……あの、貴方は?」
「申し遅れました。私、ここ葉月家にお仕えする執事の睦月と申します。」
「……葉月って……!?」
「はい、降谷様が一緒に住んでおられます愛様の本家でございます。」
「ほ、本家……」
「幸紀様、現ご当主様がお話をしたいと仰ってました。」
「ゆきのり……って誰ですか?」
睦月は降谷を振り返り、静かな口調で咎めた。
「幸紀様、とこの場ではお呼びください。でなくては愛様のお立場が更に悪くなってしまいます。」
「……彼女に関係すると?」
「はい。先日お会いなさったのでしょう?」
「先日……!まさか……」
「鳥達に妨げられたと笑っておられましたよ。」
そう、あのストーカーこと葉月幸紀は愛の親族だった。
「な、んで……親族がストーカー紛いの事を……」
「それには深い理由がお有りなのです。幸紀様は直系の娘である愛様をとてもご心配しておりました。しかし、表立ってお会いする事は出来ず……ああいう形でしか愛様に接触出来ないのです。」