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交わる物語

第1章 不思議すぎる夜咄①


 寝れない…

 私は、ハァ、と溜息をつき寝床から起き上がった。










 義骸に入っているので、長袖の黒と紫のジャージを着て外に出る。



 と、そこにはネオンだのが輝く眩しい現世の街があった。



 綺麗なときは綺麗で、それらを眺めるのは好きな方なんだけど、こういう時にはどうにも苦手なものに見えてきて、私は裏路地を通って何かの大きな塔に登ることにした。






 そこから街を見下ろすと、その場よりも光が薄れるので私は時折ここに来ていた。



 でも、それでも街が眩しすぎる時があって、私は街に背を向けて膝を抱えて座った。
 そして明かりの少ない影の形でしか見えない山を見ていよう、と顔を上げた。



















 ら、目の前に誰かが立っていた。

「うわぁああっ?!」
 素っ頓狂な声を上げると、その人は、
「わ、ご、ごめんっ!驚かせるつもりはなかったんだ!けど、話しかけようとしたら顔上げてきたから…」
 と言った。



 ホントにビックリした…



「あ、あぁ… あなたは…?」
「ん?僕はカノ!君は何ていうの?」
 その人、カノはにこにこしながら聞いてきた。

「私は。
 それで、なんでこんなところに?」
「僕ねー、ここから見る景色好きでね。よく来るんだ。は?」
「…私もだよ。お仲間さんかな」
「えー、でも、さっき街を見てなかったよね?」
「あ……それはー、その…」
 しどろもどろしだす私を、カノは変わらずニコニコと眺めている。








「眩し過ぎる、よねぇ〜」
「!」

 唐突にそう漏らしたカノに、私は少し目を見開く。


「ここまで離れてても、僕にはね、時々眩し過ぎて見てられない時があるんだ」



 ……え…?


「どういった眩しさなのかはよく分かんないけど、少なくとも、それの本当の原因は分かってるんだ。

 













 その分、自分が醜い、ってことかな」


 笑顔のままで彼は続ける。



「僕ね、昔、怪物になっちゃってさ。そいつがそれからいつも言うんだ。

 嘘をつき続けろ、って。

 それ以来、僕が騙せないものは無くなっちゃって、毎日自分を欺いて生きてるんだ。全てを欺いて生きてるなんて、なんて無様で醜いことか…なんてね」




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