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Invisible world【グレンラガン】

第3章 3部(裏有)


それでも、ほんの少しだけ私も『特別』になれたんじゃないかと思っていたのに。
(馬鹿は…私だ)
カミナに向けた罵声は私の事だ。カミナにとっては訳が分からなかっただろう。会話をしていただけでいきなり私が理不尽に叫び激昂したのだ。カミナの気持ちを知らないふりをしていた事。思わず出てしまった言葉。きっとカミナを傷つけた。
(…謝らなきゃ)
目尻に溜まった涙を払い、顔を上げる私に影が落ちた。

「――やっぱ、ここに居たか」
「カミナ」
落ちそうな夕陽を背に、逆光で息を切らせている肩が上下していた。
「探したぜ。やっぱりお前といえばここだったな」
短く溜息を吐き息を整え、逆光でも分かる笑顔で笑って私を軽く小突く。
「…探してくれたの?」
「あったり前だろーが。道が変わっててちょっと迷っちまったけどな」
小突かれた頭を、カミナが掻き混ぜた。ぼさぼさになった髪の毛の隙間からカミナを見上げた。あんなに酷い事言った私を、カミナは探してくれたのか。

私の頭を乱暴に撫でたまま、カミナが目の前にしゃがむ。
「なんか勘違いしてるみてェだけどな。ヨーコに会ってきたのはあいつがちゃんと前に進めてるか見に行ったんだよ」
「…ずっと居たの?」
「馬鹿野郎、そんな暇無ェよ。…俺はあいつとした約束を守れなかったから」
少しだけ寂しそうに、カミナが口角を上げる。約束、と私が呟く。約束の内容は聞けなかった。カミナも教えてくれなさそうだった。

「…ヨーコはちゃんと前に進んでた?」
約束の事には深くは触れず、友人の事を尋ねる。
「ああ。ちゃあんと先生してやがったよ」
「…そっか」
(ごめんね、ヨーコ)
嫉妬してしまった友人に心の中で謝った。

「カミナ、あのさっきは、私、酷い事を…」
「いいさ。気にしてねェよ。それにお前と話してると俺はこの世界に居るって実感するぜ」
にやりと不敵に笑ったカミナは私の頭を軽く叩いて、もう一度撫でた。
「ほら帰ろうぜ」
俯き口を結ぶ私に、カミナが手を差し出す。
「…うん」
それに掴まり、ベンチから立ち上がった。

「ごめんね、カミナ」
「もう謝んなっての」

手を繋いで四年ぶりにカミナと帰る。六年前にカミナと過ごしたあの部屋へ。
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