第3章 3部(裏有)
私はと言うと、出産前から大グレン団の冒険譚の続きを書いていた。
宇宙での戦いの全てをグレンの中で見てきたヴィラルが協力してくれ、冒険譚の評判は上々だ。
意外にも子供はヴィラルに懐いており、ヴィラルは迷惑そうにしながらも時折そっと相手をしてくれている。
「まったくカミナって奴は。死んでから幽霊になってうろうろしてたなんてね。なんか納得いかないわ」
茶菓子を摘みながら、ヨーコがぷりぷりと怒っている。
「まあそう言うなって。アニキだって好きで幽霊になった訳じゃないだろ」
赤ん坊の指先を優しくつつきながら、シモンが言った。
「そうだけど…」
「むしろ幽霊になってでも俺達の周りに居てくれたなんて、アニキらしいと思うよ」
全くだ、と皆で笑った。
「ねえ、また教えてよ。カミナがこの街に居た時の話。に会って、それから?」
ヨーコが身を乗り出し、私に尋ねる。
「俺ももっとアニキの話聞きたい」
シモンも頷く。
「もちろん」
私は嬉しくなり、微笑む。
膝の上の我が子は、きょとんと大人を見回していた。
ロイヤルブルーの髪の毛は彼に比べたらまだ薄い色をしていて、赤の虹彩が入った薄い茶色の目はこれからきっと真紅になる。
私はこの子に、ギミーの次の次くらいでいいから、グレンラガンに乗って欲しいとこっそり思っている。
そしてカミナの代わりに星々を、宇宙を見てきて欲しいと思うんだ。
――ねえカミナ。
あなたは今元気かな? きっと元気だよね。それとも退屈してるかな。
私がそちらに行った時は沢山のお土産話を持って行くから楽しみにしていてね。
カミナは自分の事を多元宇宙の残滓と言ったけど、私は今でもそうは思っていないよ。
だって、この子はこんなにもカミナに似てる。
…あなたににそっくりなこの子は、あなたに似てやんちゃでとっても元気です。
この子が居るから、あの頃のカミナを幻と思わずに済んだよ。
そうそう、名前はね―――…。
――世界を愛したあなたへ伝えよう。
膝の上の宝物はきょとんと私を見上げる。
私はやっと、自分の本当にやるべき事を見つけられた。
END
[Invisible world = 可視できない世界]