第3章 3部(裏有)
「…ヨーコにはずっと会ってないんだ。…元気そうだった?」
途切れがちだがなんとか声を出す。俯きそうになる顔を懸命に上げカミナを見た。
カミナは私を見ていなかった。遠く空を眺めている。目線の先にはきっと…彼女が。
「ああ。あいつはずっとあそこに居るつもりなんだろうな」
「…そうかも」
「…、どうした?」
立ち止まってしまった私の様子がおかしい事にようやく気付いたのか、同じく止まったカミナが私の顔を覗き込むが、きょとんとした顔にかっとなった。
「…ヨーコのとこにずっと居ればいいじゃない」
「…はぁ? 、お前何言ってんだ?」
「四年も帰って来ないなら、ずっとヨーコのとこに居ればいいじゃない!」
「?」
やってしまったと思った。
どうにも制せない私の感情が爆発した。よりによってカミナに向かって。
でも一度噴き出した感情は止まらない。
「私知ってるんだから! カミナはヨーコの事が好きなんでしょ!?」
「お前、何で知って…」
「知ってるよ! 分かってたんだから! …そばに居てあげればいいじゃない。カミナが見守ってくれてるって知ったらきっとヨーコも喜ぶよ。なんなら私がヨーコに教えてあげる。カミナはここに居るよって!」
「おい」
怪訝な顔をしたカミナに向かって捲くし立てる。
「、なあちょっとどうした?」
「カミナの馬鹿!!」
「あっ、おい! !」
感情をぶつけきった私は、久々に再会したカミナを置きざりにして駆け出した。私は好きな人から逃げてしまったのだ。
カミナの前から逃げ出した私は、また公園に戻ってベンチに座り込んでいた。どれくらいそうしていたのだろう。高かった筈の太陽が沈みかけていた。
――分かってる。
カミナにぶつけてしまった感情。これは嫉妬だ。心の隅に押し込めていた言葉が出てしまった。
カミナとヨーコ。好き合っていたのは知っていたのに。あの時の私も今の私も、カミナが私以外には見えないからって、ヨーコには言わなかった。皆にも隠した。
カミナを独り占めしているのが嬉しくて、カミナにとって特別な人間になった気でいた。
(四年間…ひょっとしてヨーコとずっと一緒に居たのかなあ…)
カミナにとって本当の特別はヨーコだ。知っていた、分かっていた。