第3章 3部(裏有)
どこからか電子音が聞こえた。
「あっ」
その音に反応したシモンが慌ててポケットからガンフォン取り出す。手元を見てシモンが目を見開いた。
「電話?」
「うん。…ニアから」
ニアから、と答えたシモンの頬が緩むのを見逃さなかった。私は頷きシモンに、じゃあと手を上げる。
「そっか。またね、シモン」
「ああ」
同時に遠くからロシウが近づいて来るのが見えた。
最近のロシウは苦手なのでさっさと退散する事にする。
ロシウに気付かずガンフォンの通話ボタンを押すシモンに手を振った。手を振り返してくれたシモンはそのまま通話を始めた。
「――っし!! やった!」
少し歩いた所で、後ろから聞こえてきたシモンの歓声に私は振り返り、また笑った。
何だろう。でもきっと良い話なんだろう。
私の顔も、自然と綻んだ。
「楽しそうだな、」
唐突に聞こえた声に、驚き立ち止まる。
「!?」
一瞬後に、その声の主に気付き慌てて声のする方を探した。その人は私を見ずに、遠くで通話中のシモンを見ていた。
「うわっ、あれシモンか? でっかくなりやがって…ってなんだありゃ? ガッツポーズしてやがるし」
頭を掻きながらその人はシモンを眺めている。口調こそは呆れているが、その目は優しかった。
「…良い事があったんじゃないかな」
やっと出た私の声に、その人が私を振り返る。
「そうなのか?」
その目が変わっていなくて、声も変わっていなくて、私は目頭が熱くなるのを感じた。
「うん、きっとそうだよ。私も良い事あった。…おかえり、カミナ」
「ああ。帰ったぜ、」
四年前と同じように、彼は唐突に現れた。
「久しぶり! 会いたかったよ、カミナ!」
そして私は四年前と同じく、彼に飛びついたのだ。