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Invisible world【グレンラガン】

第2章 2部


唐突過ぎてよく意味が分からない。これでもかと首を傾ける私にギンブレーが言葉を被せる。
「所謂教科書です。この先の未来、学生が使うようになる教科書を作ってみませんか」
「教科書って…。私も学生だよ?」

週に一度とはいえ私も学校に通う身だ。それがいきなり教科書だなんて。
やっと合点がいった私がぶんぶんと首を振ると、ギンブレーが真剣に頷いた
「勿論承知しています。でもテッペリン戦の事、その前後の事を見知っていてそれを伝えられる人間と言うのは、あなたが思うよりもずっと少ないのです」
そう言って、ギンブレーはその本の詳しい話を始めた。

それは人間と獣人との戦いの歴史を詳しく、それでいて噛み砕いて綴るという。
現在でも近代史の教本はあるが、それよりもずっと詳しく易しい内容にする予定だそうだ。
「大人やさんみたいな学生だけでなく、もっと幼い子供達に向けた教本です」
「子供…」

唐突にヨーコの顔が浮かんだ。
ヨーコからは時々便りが届く。教師になると言いこの街を出て行った友人。今は小学校の先生を目指していると言っていた。
「そうです、子供達に使って貰う教本です」
ギンブレーが頷いた。


人類が地上に出て三年が経とうとしている。地下を知らない子供達が少しずつ増えてきた。
政府の依頼で来たというギンブレー。きっとロシウの代理で来たんだろう。
…私を選んだ政府の人選は、正直間違っていると思う。
でもそれ以上に、間接的にでもヨーコを手助けできるかもしれないという事には心が揺らいだ。

私の迷いを感じたのか、ギンブレーが私に向き直る。
「あなたの歴史に対しての知識と教養と探究心は、一緒に机を並べてきた私が保証します。あなたはこの仕事をするべきです」
「ギンブレー…」
私がギンブレーを上目がちに見ると、彼は微笑んでいた。
「ゆっくり考えてください。私はあなたが出来ると信じています」
そう言って、彼はすっかりぬるくなった茶を飲み干し、行儀良く頭を下げて去っていった。


「昨日のあいつか」
ギンブレーが去り、考えに耽っていた私は後ろからの声に飛び上がった。
「カミナ!」
慌てて振り返るとカミナが起き上がっていた。
寝癖の付いた頭を掻いてはいるが、その目から眠気は感じない。

「…起きてたの」
「ああ、随分前にな」

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