第2章 2部
…あたまがいたい。
翌朝、寝台から起き上がった私は、とんでもない頭痛と気分の悪さで眠気が吹っ飛んだ。
「…飲みすぎた」
横を見ると、カミナが酒瓶を抱えたまま床で大の字になって鼾をかいていた。
昨晩は楽しかった。
しこたま飲んでしまい酔っ払った私は、私の倍は飲んで酔っ払ったカミナと、大層馬鹿騒ぎをしたと思う。
頬に口付けられ有頂天になった私は、私もカミナの頬にキスを仕返した。
手も繋いだ。肩も組んだ。
「…うわぁ…」
酔っ払いの愚行を思い返すと恥ずかしすぎて頭を抱えたくなる。
だけれどもそれ以上に楽しかった。
大声を出して、どたばたと騒いで。こんなに楽しい気分になったのは何年ぶりだろう。
相変わらず床に寝転がるカミナを見下ろし、私は知らず頬が緩む。
こうしてカミナと毎日大騒ぎ出来たらどんなに幸せだろうか。
「…うん、楽しかった」
幸せで緩む頬はそのままに、ふと昨晩カミナが言い掛けた事が気になった。カミナが起きたら尋ねてみよう。
ふらつく体を起こし、顔を洗って身繕いしていると入り口の方で物音がした。扉を叩く音だ。
「はぁい」
床のカミナをちらりと見てから、入り口に向かう。
「どなたですか…って朝からどうしたの?」
よたよたと扉を開けると、既に高くなっていた陽に反射する目元が目の前にあった。
「こんにちは。もうすぐ昼ですよ、さん」
「あれもうそんな時間? こんにちはギンブレー。いきなりどうしたの?」
訪ねて来た客は、友人のギンブレーだった。
見える訳が無いのだが、床のカミナを気にしつつギンブレーを招き入れた。転がる酒瓶を慌てて片付ける。
お茶を淹れながらギンブレーの様子を伺った。ただお茶を飲みに来た訳では無いであろう雰囲気のギンブレーが気になる。
「…で、一体どうしたの?」
私が椅子に腰を下ろすと、居ずまいを正したギンブレーがようやく口を開いた。
「今日は仕事で来ました」
「仕事?」
予想外の言葉に思わず首を傾げる。
「はい、さん。政府からあなたに依頼です。あなたのその知識が役立てる近代史の教本を作る仕事をしてみませんか」
「…どういう事?」