第2章 2部
訳が分からないと動揺する私に小さく笑い、カミナが言葉の先を続けた。
「一人で旅をして思った。帰る所があるってなァ、なんて嬉しい事なんだろうってな」
「…?」
カミナの鼻先が私の髪に埋もれる。くすぐったさに少々身じろぐが、きつく抱き締められ動けない。
「俺はこんなんだ。前にも言ったが、いつどうなるかなんてさっぱり分からねェ。やりたい事が出来てもいつ消えちまうかもしれねえ存在だ」
「っ、消えるなんて…」
「まあ聞け。そんなあやふやなモンなんだよ、俺は。だからな…」
更に抱き締められる。苦しいがそれよりもさっきから激しく鳴る自分の心臓音が煩くてたまらない。
「、お前の存在が俺を助けてくれる」
「カミナ…」
「虫の良い奴だと思われても、俺はお前が大事だ。お前が居なかったら俺はとっくに挫けてただろうよ」
「……」
「ありがとな」
「……!!」
頭上でカミナが笑った。そうして私の髪の毛に口付けた。
「…あの、カミナ。私…カミナの事、虫が良いなんて思ってないから!」
「そっか。ありがとよ」
「私こそ…ありがとう…!」
ぶわりと自分の過去を思い出した。
一人ぼっちの地下暮らし。輝く地上。新しい友人達。そしてグレンラガン。
真紅のマントを翻した、私の太陽だったカミナ。
私を明るい世界に導いてくれたのは、カミナが居たおかげだ。とてつもない恩人の彼。
そのカミナが私を認めてくれた。頼ってくれた。
一生出来ないと思っていた恩返しが出来ているなんて。
「ありがとう、カミナ…!」
「だから、俺が感謝してんだっての」
カミナが照れた声でぶっきらぼうに呟く。それにかぶりを振り、私もカミナにしがみ付く。
酩酊は吹っ飛んでいた。
カミナに好きだと伝える気持ちも、既に吹っ飛んでしまっていた。
「…感謝してるぜ、」
再び聞こえたカミナの言葉と、感じるカミナの温度と、頬に口付けられたカミナの感触。
アルコールが原因ではない自分の体温に、私は世界一幸せだと思った。