第2章 2部
「…もう少しぶとうか?」
「いや勘弁」
照れたようにまた頭を掻き始めるカミナに大きく溜め息を吐く。
(私が好きなのはあなたなのに)
二年経っても言えない私は、底無しの意気地無しだ。
帰って来たカミナは、二年前とちっとも変わっていなかった。
いい意味でもあるし悪い意味でもある。
二年前と様変わりしている私の家に入り、きょろきょろと見回し、これは何だあれは何だと尋ねてくる。
「カミナは二年間どこに行ってたの?」
自宅に戻って食事を用意して二人で一緒に食べ、飲み物を用意してからカミナに聞いてみた。
「ああ、そうだな…色々だ」
「色々?」
「ああ。世界はものすげえ広い! って事だ、」
「広い…世界」
そしてカミナが旅で見た色々なものについて怒涛の如く喋り出した。元々口数の多い人だ。話し始めるとそれは尽きる事が無かった。
カミナが話し始めてそれを夢中で聞いているうちに、気付けばすっかり日が暮れていた。
「…あれっ、もう暗くなり始めてる!」
「うおっ!? 本当だな。話はまだまだ半分も終わっちゃいねェってのに」
「それもすごいね…。ねぇカミナ、ちょっと話は一旦休憩しようか。お茶も淹れなおすよ」
「ああ、悪ィな」
カミナと私の前にあったマグカップを取り、キッチンに立ちお茶を淹れる私にカミナが頷いた。
「…まだまだ話が終わらないなんて、カミナはすごいなあ。色んな所に行ったんだね」
茶葉を計る私が独り言のように呟く。本当にそう思う。カミナは凄い。
「…ああ、色々な所に行ったよ。でもまだまだだ。俺はまだ世界の半分も見終わっちゃいねえ」
独り言同然だった私の台詞だったが、カミナがそれを拾ってくれて返した。
「俺の見ていないものがまだまだ残っていやがる。それを俺は見たいし、一周したらその頃にはまたきっと変わってるだろうからもう一遍見て周りてェな」
「…ニ周目もするの?」
「ああ。飽きないぜ」
カミナの目の前に置いた新しい中身のマグカップ。それを口に運びながらカミナが頷いた。
「でもな、世界を回ってみて思った。…俺はあの時の景色が、一等好きだ」
「あの時の…って?」
「俺がこの地上に出て来た時の景色だ。あれに敵う景色にはまだ会ってねェ」