第2章 2部
「…っと。そうだ、」
「何?」
幸せな時間だった。掻き混ぜられていた頭の手が止まり、カミナが微笑む。
懐かしい声に胸がいっぱいになっていた私は、カミナの声に目を上げた。目が合い、笑うカミナを見て彼の次の言葉を待つ。
「お前、彼氏出来たんだなあ」
「…は?」
予想外の台詞に真っ白になった私だが、そのカミナは目を細め、ぽかんとしている私を眩しそうに見ていた。
「お前の好みがあんなひょろい奴とは、この俺様も知らなかったぜ」
「…何言ってるの?」
「なんつーの? 今まであんまり居なかったタイプっつーか…意外だな」
「…あの、カミナ?」
カミナは何故か遠い目をして私を見ている。
「それとも今度は、先に言って来た奴と付き合うのか?」
「ちょっとカミナってば!!」
どんどん遠い目をしていくカミナを慌てて小突いた。はっと視線が戻るカミナに息を吐く。
「…ねえカミナ。いつからその樹の上に居たの?」
「お前がここに来るちょっと前だな」
「呆れた」
肩を竦め溜め息を吐く私に、カミナが横をぷいと向く。
「いや、せっかくだから脅かそうと思ったらよ。なんかお前とそいつが話し始めたから」
「聞いてたの?」
横を向いたままカミナが黙った。その様子が可笑しくて、少しだけ噴き出してしまう。
「…なんだよ」
「あのね、最初の人は私の同級生。私、学校に行ってるんだけど同じクラスの人」
話が面倒になるので名前も知らない事は省略した。
「…で、眼鏡の方が彼氏か?」
「違います!」
まだ少し剥れたままの口調で聞くので、即座に答える。
「ギンブレーは友達! 同級生でただのお友達でシモンやロシウの部下になる人!」
「…彼氏じゃないのか?」
「そうです! 彼氏なんてもの自体が居ません!」
「…そうか」
あきらかにホッとした顔でカミナが顔を綻ばせた。
カミナの様子に首を傾げつつ、はたと気付く。
(…ひょっとして、カミナって)
ひょっとしてひょっとしたら。
…嫉妬してくれたのだろうか? 今度は私が横を向く番だ。耳を赤くしながらわははと笑うカミナの様子を伺う。
「なんだそうか! いやあ、娘が嫁に行く気分を味わっちまったぜ!」
「………」
そりゃそうだ、に彼氏なんてまだ早ェよなあ! と豪快に笑うカミナに力が抜けた。