第2章 2部
もし端から見る人がいたら、私が一人で木陰に転がり込んだように見えただろう。幸いにも周りに人気は無く、不審がる人は居なかった。
「カミナ…カミナ!」
地面に仰向けに転がるカミナと、覆い被さる様にカミナに縋る私。どうしよう名前しか呼べない、と混乱する思考でそれでもカミナの胸に顔を埋めた。
名を連呼する私に苦笑して、カミナが私の頭をぽんぽんと叩く。
「…帰ったぜ」
「カミナぁ…! あの…あの時、ジーハ村に送ってあげられなくてごめん…!」
「馬鹿。お前そんな事気にしてたのか? んな事忘れてたよ」
「…ごめん…っ!」
カミナが帰って来てくれた、約束を守ってくれた。嬉しくて視界が歪む。
「ちゃんと帰って来たぜ。でっかくなったなあ、」
「そ、そんな事無いよ」
ともすれば詰まりそうになる声を懸命に目の前のカミナに向けた。
「ああ二年ぶりか。そりゃでかくなるよなァ」
「…そんなに背伸びたかな?」
「いや」
カミナがにやりと不敵に笑う。そしてカミナの上で潰れる私の胸元を指差した。
「この辺が特に」
二年で少しだけ質量を増やした私の胸。へらりと目尻を下げるカミナ。一気に頬と耳が赤くなる。
「…カっ…カミナのばかあああああっ!!!!」
「痛ェ!! 久々の再会だってのに引っ叩くんじゃねェよ!!」
「煩い! ばかばかばか!!」
ぽかぽかとカミナを殴りながら、全く変わっていないカミナを、やはり嬉しく思う。
私の目端に浮かぶ雫は、久々の賑やかな再会で一気に乾いて飛んだ。
姦しい再会がようやく落ち着き、樹の陰から出ながら私はカミナに向かい合う。
「…お帰りなさい!」
「ああ、ただいま」
改めて言うと照れるが、やっと顔を見て言えた。それはカミナも同様のようで鼻の下を掻いている。
「うちにおいでよ。私お昼ご飯まだなんだ。一緒に食べよ」
おう! とカミナが笑う。それが久しぶり過ぎて嬉しくて胸が熱くなる。
「は元気だったか?」
「うん。カミナは?」
「俺様が元気じゃ無い訳ねェだろうが」
「…うん! カミナの話を色々聞かせて」
この二年間の話を聞きたくて家路を促す。
カミナも嬉しそうだ。私の頭に手を伸ばし、わしわしと撫でる。
その触れ方が懐かしくて…どうしようもなく懐かしくて。
再び涙が浮かびそうになった。