第2章 2部
どこで聞きつけたのか、新政府に出掛けていた筈のギンブレーが慌てて私の所に来てくれた。
その事がちょっと…いやかなり嬉しい。
「ありがと、ギンブレー。ちゃんとお断りしたし、ギンブレーは気にしないで」
「はあ…」
怒りが肩透かしになったのか、ギンブレーが気の抜けた返事をする。
「ギンブレーも仕事中でしょ? もう戻って良いから」
「そうですが…、分かりました。では失礼します」
納得いかないという顔をしながらも、ギンブレーは私を振り返り振り返り、来た道を戻って行く。
以前ギンブレーは友人が少ないといったのだが、私だって友人の数は少ない。
危機とまでは行かなくてもこうして心配される事の有難さに頭が下がる思いがする。
ふと思い出した。
遠くへ旅立ってしまった友人は今頃何をしているのだろうか。
朱色の髪を靡かせ金色の瞳で夢を見据えているのだろうか。
そしてもう一人。
世界で一番大好きな人は、今頃何処にいるのだろうか。
相変わらず天を目指して猛進しているのだろうか。
「よう」
不意に声が降りてきた。
何処からか聞こえてきた声は、先程の同級生かと思い咄嗟にきょろきょろと頭を振る。しかし誰も居ない。
おかしいなと首を傾げていると声がまた降ってくる。
「上だ、上」
上? と後ろに聳え立つ樹を見上げた。
と、同時に降って来た声音に既視感を覚えて目を瞬かせた。この声は。今度こそ、この声は。
「よう、久しぶりだな。」
「…カミナっ…!!」
樹の上に跨り、視線をこちらに降ろす彼を。
私は、カミナをそこに見つけたのだ。
「っ…と」
勢いをつけ、カミナが地面に降り立った。
樹の陰になっているが、その口角が上がって笑う様は彼らしくて眩しい。
「カミナ…」
感極まる、とはこういう事をいうのだろう。言葉が出なかった。
二年ぶりに会う彼は変わっていなくて、それがまた少しだけ悲しい。
「なんだァ、驚いちまって言葉が出ないってか?」
自分の頭に手をやりながらカミナがまた笑う。
こくこくと頷いて、言葉が出ないからと勢い良くカミナに向かって地面を蹴った。
「…カミナっ…!!」
「うおっ!」
勢いはそのままカミナの胸に飛び込ませる。受け止め損ねたカミナごと、二人で縺れて倒れ込んだ。