第2章 2部
呆けてベンチに腰掛けている午後。
気付けばとっくに昼食の時間は過ぎていて、お腹は減ったような気はするが食欲は無かった。
立ち上がりたいが気が抜けてしまって、どうにも足が動かない。
「…告白、されちゃった?」
小さく呟いてみるが、立ち上がる元気はやはり出なかった。
つい先程。声を掛けられた同級生から向けられた感情は、案外と自分に響いていた。
申し訳ないと思うが悩む間も無くお断りをしたのだけれど、私はこの同級生の事を全く知らない。
なのに彼は私を知っているという。
異性として好きだという。
その不思議さと彼のエネルギーに圧倒される。
「…付き合う、かあ」
考えた事も無かった。自分が誰かとお付き合いするなんて。
そんなのカミナとでも考えた事が無かったのに。
(…カミナと、付き合う?)
一瞬浮かんだ言葉に一気に頬が赤くなるのを感じた。
「さん!」
ぼけっとしたままの私に、遠くから息を切らせて走って来る足音と声がした。
声の方を向くとひょろひょろとした影が懸命に走ってこちらに向かって来る。高い位置の太陽に眼鏡が反射していた。
「…ギンブレー」
息を切らしたギンブレーは、ベンチでぽかんとしている私の前でバランスを崩しそうになりつつ、踏ん張って止まった。
「っ、すみっ…ません、さん!!」
「どしたの、そんなに急いで」
ぜえぜえと息を吐くギンブレーを見るのは初めてである。運動が苦手なんて話は聞いた事は無いが、こんなギンブレーも見た事が無い。
「…あのっ、あいつ、来ませんでしたか!? さんにっ、変な事言っ…!!」
「ああ、ひょっとして同級生の」
「そうです!!」
ギンブレーが肩を怒らせて叫ぶ。
「……」
その剣幕に逆に頭が冷えた。苦笑しながらギンブレーに答える。
「わざわざ来てくれたの?」
「当然です! 私が紹介しなかったからって、直接さんの所に行くなんて言語道断! 失礼にも程がある!!」
「…そういう問題じゃないような気もするんだけど」
「大問題です!!」
もう限界だった。
我慢していた笑いがとうとう漏れ出す。
いきなり笑い出した私に今度はギンブレーがきょとんとしていた。そんな彼を尻目に笑い転げた。