第2章 2部
ハンカチを受け取り、ぐしぐしと鼻を鳴らす私にギンブレーはぽつりと呟いた。
「あのさんって、カミナさんの事。好き…ですよね?」
「…うん」
躊躇い無く頷き、私はその事実に仰天した。
今まで誰にも言えなかった事を、ギンブレーに当てられた。
そうして私自身も、初めてこの事を人に言えた事に。
思えば彼、ギンブレーと私は似ている所が多いと思う。
ギンブレーはカミナの事こそは知らないが、グレン団に憧れて出て来た事とか。
全てを照らす、憧れの人が居るところとか。
違う箇所は、私のは恋心でギンブレーは純粋に憧れの人だという事。
会話の折々にその人の話題は出るし、何よりその人はギンブレーの世界の中心だ。
そう。ギンブレーはかなりの頻度で、ロシウの事を話題にする。
ギンブレーにとって大グレン団の憧れの人はシモンらしいが、新政府入閣研修を受けているうちにロシウに心酔したらしい。
「ロシウさんは素晴らしい方です。私はロシウさんの元で日々働けるなら、どんな努力も惜しまない」
太陽に輝く眼鏡並みに、きらきらの瞳で言われたら苦笑いするしかなかった。
「…ギンブレーはロシウの事が好きなんだね」
まさかとは思うが一応両方の意味を込めて言うと、ギンブレーはぽかんとして首を傾げた。
「好き…? 憧れですが。どうなんでしょうね」
まあどっちでも良い。そういう事なのだろうと思っておく。
人間の感情も一種類では無い。色々あるのだ。
そんな訳でヨーコが去ってからは、私はこのギンブレーと時々会話をする仲になっていた。