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Invisible world【グレンラガン】

第1章 1部


「じゃあ…お願いしてもいいかな?」
うなされたついでだ。甘えてしまおう。
「おう、何でも言いやがれ!」
「手、握っていい?」
「手、か?」
私の言葉にカミナがぽかんとする。
が、私のへらへらした笑い顔に苦笑して、撫でていた手を私の右手に繋いでくれた。
「ほらよ」
「ありがと」
カミナのちょっと汗ばんだ手が私の掌と繋がる。私の手も汗ばんでいる筈なのでカミナが嫌じゃないかなと気になった。
そんな私の思考も抜け落ちる程全く気にせず、カミナが手を軽くぎゅうと握ってくれた。

「早く元気になれよ。そうじゃねェと俺が祟ったみてェじゃねェか」
「…幽霊だしね」
「まァな。でも祟るってどうやるんだろうな?」
「知らないよ」
真剣な顔をして首を傾げるカミナが可笑しくて笑うと、遠のきかけていた頭痛が戻って来た。

「少し寝ろ。ちゃんとついててやるから」
「ん、ありがと」
お言葉に甘えて目を瞑る。途端にカミナの手に意識が向く。
――もう忘れるって決めたのに。
この恋心はなかなか手強い。
それでも時間が経てばきっと忘れられる。

そんな事を思いながら、熱に埋もれつつ私の意識は闇に沈んで行った。







「…ん」
喉の渇きで目が覚めた。
「夜中かな…」
窓から見える外の様子で深夜だろうかという気がした。
大分熱が引いた気がする。やはり一過性のものだったらしく、軽く頭を振っても頭は痛くなかった。

「あ…カミナってば」
カミナは約束を守ってくれていた。
私の寝る寝台に寄り掛って足を投げ出して鼾をかいていた。しかもちゃんと手を繋いだまま。
この手を離したくなくて、私も手を繋いだまま枕元のコップの水をあおる。この水もカミナが用意してくれたものだ。
「ありがとね」
鼾の主を起こさないように、小さくお礼を言う。


カミナに再会して色々あった。
シモンや大グレン団の皆にカミナを会わせる事が出来たし、ロシウやリーロンとも話せた。ヴィラルや獣人の事も何とかなった。ニアは何かを感じたようだけれど。

そして何より物凄く、私が救われた。
真っ暗闇の中に囚われ一歩も歩けなくなっている私に、笑いながら手を引いて明るい場所に連れ出してくれた。
彼が好きだと思っていたけれど、憧れと重ねていた事にも気づけた。
身動きが取れなくなっていたこの恋の落としどころがやっと見えたのかもしれない。
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