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Invisible world【グレンラガン】

第1章 1部


回線のヴィラルが、はっと顔を上げた。
「それが本当にお前のやりたい事か?」
「『それが本当にお前のやりたい事か?』」
カミナの言葉を反芻する。ヴィラルの目がこれ以上無い位に見開かれた。

そうしてカミナは満足そうに口を閉じた。
(…終わり?)
「あァ終わりだ。ありがとな」
(分かった)
…予想よりも短い会話だったが、何となくだけれど二人の関係的にこれでいいのだろうと感じる。

「…あのカミナが言いそうな事だ」
しばらくの間押し黙っていたヴィラルが漸く口を開いた。表情を見ると微かに口角を上げ画面を上目遣いに睨みつけている。

「…面白い。貴様何者だ? 名は何という」
「わ、私?」
「そうだ」
ヴィラルはそう言いながら、戦いを止めてしまったヴィラルの様子を伺っていた他の獣人達を呼び集める。
「…」
「か。成程。お前が大グレン団の巫女と言う訳か」
「…巫女って」
「覚えておこう」
「違うって」

否定する私の声は聞かず、ヴィラルが獣人達を振り返った。
「引き上げるぞ」
ざわざわと獣人達がざわめく。ヴィラルのその声は外まで聞こえたので大グレン側もどよめいた。
「!」
通信回線を閉じてくれていたシモンから慌てたように回線が入った。
「! すごいよ!」
「獣人共が帰って行くぜ!! すげぇじゃねぇか!」
「、大丈夫? 一体何を話してたの?」
「…内緒」
シモンに続き、話け掛けて来るヨーコにキタン。それらに弱々しく微笑みながら私は肩を竦めた。

「はー……」
引き上げていくエンキドゥドゥと獣人達を見送りながら、くたりと背中を倒す。
(…どうするかな、ヴィラル)
その背中を預けたカミナにぽつりと独り言のように話しかけた。
「奴は奴で、自分のやりたいように決めるさ」
(…そっか。――巫女だって。カミナの言葉を預かっているなんて言い方したからかなあ。他に説明出来ないから困るね)
「思わせとけ。その方がきっとあいつの中で都合がいいんだよ」
(……そうだね)

事実その後、ヴィラルがカミナシティに攻め込んで来る事は無かった。
数年後ヴィラルは反政府ゲリラの活動を始めるのだが、この時点でそれは知る由も無かった。


そしてこの日の晩、私は熱を出して寝込んでしまったのだ。
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