第1章 1部
「! 良いところに!」
立ち止まっていた私に屋根の上から声が掛かった。ライフルを構えエンキ達を狙うその姿は間違いようが無い。
「ヨーコ! 状況は?」
「悪くは無いけど良くも無いみたいね」
「何でェ! グレンラガンでやっちまえば良いじゃねェか!」
(そうなんだけど)
確かにグレンラガンで迎撃すればすぐに決着がつくであろう。カミナは知らないが一度エンキドゥドゥは螺旋王の前で圧倒的に敗北している。
幾度と無くシモンはヴィラル達獣人に話し合いを求めてきた。
しかしそれでもヴィラルはテッペリン奪回にこうして来る。おそらく忠誠心からの特攻かもしれない。
それはとても悲しい事なのではないか。
「シモンは!? グレンラガンは来るの!?」
私がヨーコに聞くと、インカムから何か返答があったようでヨーコが頷いた。
「もうすぐ来るって! ロシウが出れなくてシモンだけみたいだけど」
「デコ助?」
(カミナが居なくなってからは、グレンにはロシウが乗る事が多かったの)
「ああ成程。温泉でも気合で乗ってたしな」
私の言葉に、へェ! とカミナが感嘆した。
「遅くなってごめん!」
シモンの叫び声と共にグレンラガンが低滑空して来る。街中なのでスピードは落としていたが轟音と土煙が上がり、私とヨーコから離れた地面に着地した。
赤と黒の機体を見つけエンキドゥドゥがこちらを向いた。
「来たかグレンラガン! 今日こそ貴様等の最後だ!」
「ヴィラル! どうして俺達の話を聞いてくれないんだ!」
シモンが叫びヴィラルも吼える。睨み合ったままお互い一歩も引かない。
「…、ちょっとお前を危ない目に合わせるかもしれねェ」
その様子を見据えていたカミナがぽつりと呟いた。
「え? カミナ? どういう事?」
「行くぞ」
「えっ…ってうわぁっ!?」
カミナが私を小脇に抱え、猛然とグレンラガンとエンキドゥドゥに向かって駆け出す。
「!?」
傍からは私が変な体勢で走り出したと思われただろう。
ヨーコが慌てたようにライフルの照準から視線をずらし、ガンメンに向かって猛突する私に声を上げた。