第1章 1部
「…ダヤッカが何だって?」
漸く声を出せたのか、カミナが恐る恐ると尋ねて来る。
「ロージェノムと戦った時のダヤッカにキヨウが一目惚れしちゃったみたいで。でもダヤッカは何が不満なのか一年間逃げ回ってるんだよね」
実際あれは照れてるんだと思う。キヨウもそれを分かっていて追い掛け回している節がある、と言うとカミナが大袈裟に天を仰いで溜め息を吐いた。
「あのダヤッカの奴がねェ…。マッケンもだっけか?」
「そう。ロージェノムと戦った後、レイテさんとスピード結婚。今は二人で修理工場やってるよ」
「へえ!」
「今度尋ねて行ってみようね。産まれた赤ちゃん可愛いんだー!」
ヨーコと一緒に訪ね見たレイテ達の子を思い、笑みが浮かぶ。
と同時に気付いてしまった。
カミナが居なくなって、ここが一番変化したのかもしれない。カミナの時は止まってしまったが、生きている人間達の時間と関係は進んでいく。
レイテ達の所の赤ん坊は可愛かった。そのうちキヨウ達だって結婚して子供を成すのかもしれない。
(…私だって)
いつかは結婚して産んで。誰かと共に老いて行く、そうなるかもしれない未来があって。
だけれど時間が止まったカミナはそこから進む事は無い。
そのカミナと一緒に居る私はどうだろうか。
未来に進めるのだろうか。
――カミナを残して?