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Invisible world【グレンラガン】

第1章 1部


「…さん、整備部の仕事はあなたの仕事だ。中途で放られるととても困ります。その休みはいつまでですか」
やんわりと言ってはいるが要するに内容は「早く仕事に戻れ」である。どうもこれではとても話など出来そうに無い。
(ごめんカミナ、ちょっと出直そうか)
困り果ててカミナに囁く。そのカミナは袖を引く私の手を軽く払い、一歩前に出た。

「なあに一人でやろうとしてんだよデコ助。お前の小せェ背中で、全部が背負いきれる訳無ェだろーが」
そう言ってカミナがロシウの広い額をデコピンする。
勿論それは当たらないのだが、ロシウが何か違和感を覚えたのかきょろきょろと周囲を見回した。
「そうだ、周りを見ろ。助けて貰えよ、周りの人間によ」
カミナが独り言のようにロシウに語りかけた。その声は決してロシウ自身には届かない。
それが堪らなく切なくて、私は思わず声を出した。

「ロシウあのね! …私は用事っていうか…ちょっと最近煮詰まってて。カミナシティが出来てからもうすぐ一年が経つと思うと色々感じちゃう事があって」
「…そうなんですか」
ロシウが黒目がちな目を見開いた。話を聞いてくれそうだと感じそのまま続けた。
「だからロシウにも皆にも言い辛いんだけど…、周りを見ることにしたの。カミナが遺した大グレン団の皆やカミナシティを見て、ちょっとこれからの事を考えようって」
半分は嘘だが、半分は本当だ。むしろカミナの幽霊の事が無ければ全部本当の事かもしれない。

話しながらふとロシウの顔を見た。見開いた目はそのままで少し焦点がずれている。
はっと気付く。ロシウの目の下の隈、あまり良くない顔色。疲れた表情。
(カミナの言っている事はこれだったんだ…)

「…あのねロシウ、気を悪くしないで聞いてくれるかな」
「何でしょうか」
「ロシウも周りの事を見て」
思いがけない事をいきなり言われたらしい、ロシウが目を瞬かせた。
「何を言ってらっしゃるのですか?」
よく分かりません、とロシウが生真面目に答えた。私はちらりとカミナを見てから言葉を続ける。

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