第3章 3部(裏有)
螺旋王ロージェノムが倒され、人類に平和が戻った。
地上に出ても、もう獣人に襲われる事は無い。
私とカミナはこうしてずっと平和に暮らしている。
今もこれからも。ずっと。
幽霊なんかじゃないカミナと、永遠に。
――幽霊?
幽霊って一体何の事だ。
カミナが幽霊だなんて、有り得ない。
だってカミナはここに居る。
私の横で微笑んでいる。
触れればそこに居るし、口付けだって出来る。
頭だって撫でて貰える。
それが幽霊だなんて笑ってしまう。
カミナは生きている。
だってそこに、居る。
馬鹿馬鹿しさに苦笑して、カミナを振り返った。
いつものカミナがそこに。
意志の強い紅蓮の瞳に、大空の色をした髪。
私を見下ろすその目は優しくて。
私を包むその腕は温かくて。
囁く声音は胸を震わせる。
「…カミナ」
なのに何故。
カミナが色褪せて見えるのだろう。
「よく気付いたな」
「!」
どこからか声がした。しかし目の前のカミナからではない。
でも聞き慣れた声はすぐに誰だか分かった。
「カミナ!?」
目の前のカミナは優しく微笑んだままだ。でもその口は動かない。
「お前が気付いたらこの夢はお終ェだ」
「…どういう事」
どこからか聞こえるカミナの声に、きょろきょろと見回すが分からない。
「…夢、なの?」
「ああ、お前の夢だ」
きっぱりと言い切る声に体の力が抜けた。
「目、開けろよ。」
「……」
声の言う通りに一度目を閉じ、恐る恐る目を開ける。
体が重くなった気がした。ぼやけた視界に目を瞬かせる。
見慣れた天井が見えた。
「…ここは」
いつの間にかベッドで寝ていた。見慣れた天井は自宅の寝室のものだ。
「また夢…」
有り得なさに思わず呟く。自宅はムガンの来襲により無くなってしまった筈だ。
「夢みてェなモンだけど、今度は夢じゃねェよ」
「!」
独り言に返事があり驚いて飛び上起きた。
遠くに聞こえた先程とは違い、すぐ傍で聞こえた返事に慌てて回りを見回す。
「よう。目ェ覚めたか」
「カミナ…!」
寝台のすぐ隣でカミナが笑っていた。