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Invisible world【グレンラガン】

第3章 3部(裏有)


「皆にカミナが見えるんだね」
大きい背中にしがみ付きつつ、ぽつりと呟く。
「はァ? なに寝惚けた事言ってんだ? 俺様が見えねェ訳ねぇだろうが」
エンジン音の隙間からカミナが叫んだ。
「…そっか。そうだよね。なに言ってるんだろ私」
不意に浮かんだあやふやな違和感は、すぐにカミナの背中の温かさに沈む。

「! カミナ!」
呼ばれた声にきょろきょろと周りを見回すと、今度は眼下でヨーコが手を振っていた。
「ねえ二人とも! どこに行くの!?」
「ちょっくらと出掛けてくらァ」
手を拡声器代わりに口に当て叫ぶヨーコに、カミナも叫び返した。
「忘れて無いでしょうね、今晩はシモンとニアの婚約パーティよ!?」
「分かってらァ。夜までには戻るっつーの!」
カミナの返答に満足したのか、ヨーコが口から外した手を振る。
「行ってくるね、ヨーコ!」
私も大きく手を振り返した。

ガンバイクが空を駆ける。平和になった地上は全てが眩しかった。カミナの背中にしがみ付いていれば、どこまでも行ける。そう思う。

途中休憩に寄った川の畔で顔を洗いながら、カミナが独り言のように口を開く。
「俺に続いて、シモンも結婚か」
「俺に続いて?」
先程ヨーコは、今晩シモンとニアの婚約パーティがあると言った。もう何年も仲の良い二人だ。いつそうなってもおかしくなかったし、おめでたい。だが、カミナの言っている意味はよく分からない。
「お前はさっきからなに寝惚けてるんだ?」
首を傾げる私に苦笑して、まだ雫の光る睫毛のままカミナが顔を近付けて来る。
「俺とお前も結婚しただろうが」
「…結婚」
――そうだ、私はカミナと結婚したのだ。
「シモンも絶対幸せになるぜ。俺がこんなに幸せなんだからな」
…そう、幸せだった。カミナが生きている。私の隣で笑っている。一生一緒に居るという契りを交わして、私と並んで歩いている。

「……!」
見開いた目から、ぼろぼろと涙が流れた。
「おいどうした」
「…うん、カミナ。あのね」
私はカミナに向かって、濡れた頬で笑った。
「愛してるよ、カミナ。喩えあなたと離れ離れになったとしても」
「?」
怪訝な顔をするカミナに口付けて、笑う。

「大好きだよ、カミナ」
カミナも笑って、私にキスを落とした。
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