第3章 3部(裏有)
そう、そうなのだ。
ヨーコがここまで食い下がるなんて珍しい。
先程は背中を押してと言われた。
でもそれだって私を連れて行く、そこまでの理由になり得るだろうか。
「…あいつが」
しばし言い澱んでからヨーコが口を開いた。
「あいつって?」
リーロンが促す。
「あいつ…、カミナが言うのよ」
「…!」
思いがけない名前が出て、私はリーロンと顔を見合わせた。
それを見てヨーコは言い繕うように早口で続けた。
「カミナが言うの。『をよろしく頼む』って。理由は分からなかったしあいつも言わなかった。そもそも夢だし…」
自分でも自信が無いのかもしれない。言葉を途切れがちにさせながらヨーコが言う。
「…それならと一緒に居たい、って思ったの。夢とはいえ、あいつと…カミナとした約束だもの。叶えたい」
段々と俯いて声が小さくなるヨーコに、言葉が出ない。リーロンも同じだったようだ。
(…カミナが)
再会した時、カミナはそんな事は言っていなかった。
ヨーコが見た夢はここカミナシティに来る前だと言った。それは私がカミナと再び会う前だろうか。それとも…。
いや、時期なんてどうでも良かった。
(…カミナの馬鹿。私の事なんて気にしなくていいのに)
ヨーコの夢の中でまで、私を気遣ってくれたのだろうか。
でもそれが却ってヨーコを苦しめているというのに。
(…切ない)
――嬉しいけれど、なんて悲しい。