第3章 3部(裏有)
跳ねた心臓が衝撃で止まるかと思った。
目の前で肩を震わすヨーコ。濡らした両膝が寒そうだった。
それを見つつ、私も震えが止まらない。
(…ねえ、カミナ)
カミナはヨーコにも見えていた。
少なくとも存在を感じられていた。
(…ヨーコはちゃんとあなたに気付いたよ…)
でもカミナを感じていたとしても、ヨーコはこんなに苦しそうだ。
(駄目だよカミナ、ヨーコを泣かせちゃ)
目頭が熱くなる。涙を懸命に我慢し、ヨーコを見た。
「ヨー…」
「残念だけど、それは無理ね」
俯く友人に声を掛けようと震える声を絞り出す。その声を遮って細身の人物が現れた。
その姿を確認してヨーコが驚いたように声を上げる。
「リーロン」
「ごめんなさいね、盗み聞きみたいな事しちゃって」
「…無理ってどういう事?」
「そうね…」
突然現れたリーロンはうふふと微笑み、私にウインクをしてからヨーコに向き直った。
「ヨーコ、宇宙に行く人数は決まってるの。カミナシティ住民を乗せたアークグレンの避難時とは訳が違うわ。私達は戦いに行くのよ」
「…そんなの分かってるわよ」
微笑んだままヨーコを諭すリーロンに、ヨーコは涙目を慌てて擦ってから、不満そうに唇を尖らせた。
「戦いに行く、つまりカテドラル・テラに乗るのは皆がスペシャリストって事」
「……」
ヨーコがリーロンから目を逸らす。
「残念だけどは違う。残る側の人間よ」
「……!」
リーロンの口からはっきりと言われ、ヨーコが下唇を食いしばる。
「諦めなさい。だって地球で仕事があるわ。それだって大事な事でしょ」
「……」
返事はしなかったが、それでもヨーコは不満そうに目を逸らしていた。
それを見てリーロンも「困ったわね」と肩を竦める。
「じゃあヨーコ。あんたは何でそこまでしてを連れて行きたいの?」
「!」
溜息と共にリーロンに問い詰められ、ヨーコが再度唇を結ぶ。
「…ヨーコ?」