第3章 3部(裏有)
月落下の危機が去り、地球に戻った際に懐かしい顔にも会った。
シモンの後ろに居た見慣れない金髪、長い前髪に隠れた顔。
誰だろうと首を傾げる私にシモンが振り返る。
「どうした? …ああヴィラルか」
きょとんとした私にシモンが笑って、背後を指差す。
「…ヴィラル!?」
遠い昔に見た時よりも随分伸びた髪。その色に、ようやく思い出した。
ヴィラルも同様だったようで、何度か目を瞬かせた後、にっと口角を上げる。
「ああ、お前か。…久しいな、グレン団の巫女」
「ちょっ! 馬鹿やめて!」
慌ててヴィラルの口を手で覆った。
「もがっ!?」
いきなり私に飛び掛かられて、ヴィラルが目を白黒させる。
六年前、ヴィラルを筆頭にして獣人が攻め込んできた時、カミナに促されるがままにヴィラルと会話した際に勘違いされたのを漸く思い出した。
「みこ?」
私達を見比べ、今度はシモン達が首を傾げた。
「な、なんでもないなんでもない!」
ぶんぶんと首を振り、顔色が土気色になって来ているヴィラルの口を更に塞ぐ。
「…ぶはっ! おい、息が出来んだろうが!!」
「わっ! …ごめんなさいっ」
「殺す気かッ!」
ヴィラルに振り解かれ、慌てて離れた。
ぜいぜいと肩で息をするヴィラルがじろりと私を睨む。
「…なるほど、皆にはお前の力は内密と言う訳だな?」
「へ?」
肩を上下させながらヴィラルがにやりと笑った。したり、とした顔に思わず力が抜ける。
「了解した。心に留めておこう、グレン団の巫…もががっ!」
「馬鹿!!」
再度ヴィラルの口を塞ぎ、私は大きく溜息を吐いた。
しかし何でこんな勘違いを。
「…ヴィラルってもしかして天然?」
「天然とはなんだ?」
「…なんでもない」
勘違いもはなはだしいが「そう思わせとけ」とカミナが言った事を思い出し、言葉を飲み込んだ。