第3章 3部(裏有)
「お前ずっと、ちゃんと泣いて無かっただろ?」
「……」
「こんな風に大声で泣いた事あるか?」
「…わかんない」
「お前はずっと、ちゃんと声出して泣いてねぇんだよ。あいつが死んでからも、ずーっとな」
「…!」
キタンの言葉に虚を衝かれた。
目を見開く私に「気付いてなかったのか?」とキタンがまた笑った。
「お前を見てて不安だった。割れそうな風船みてぇに、いっつも張り詰めてて」
「そんな事…」
「そう見えちまったんだよ。お前がいつか破裂しちまうんじゃないかってな」
「…そう…」
知らなかった。
私はキタンにそんな風に思われ、心配されていたのか。
「俺がお前を連れて来たからな。責任感じてんだよ、これでもな」
キタンが鼻を掻く。
「俺が連れて来たばっかりに、お前に辛い別れをさせちまった」
「…そんな事…」
「まあ最近は大分変わってきたけどよ。なんつーの? 雰囲気変わったっての?」
「…キタン」
地下で暗く過ごしていた陰気な子供だった私。
連れて行ってと裾を引く子供に、真面目に相手にしてくれたキタン。
あの時キタンに会わなければ、私はここに居なかったかもしれない。
キタンが居なければ私はカミナを知らないままだったかもしれない。
私が外に出る理由を教えてくれたのはキタンなんだ。
キタンは私に違う世界を教えてくれた人だ。